SIGNATURE STYLE

マーク・ロンソンの流儀

December 2018

text ross povey

着用の時計はショパールの「L.U.C タイムト ラベラー ワン」。
photograph by courtesy of chopard

あなたはこれまで多くの人とコラボレートされてきましたが、音楽に限らず、ファッションのような他の分野でも、もう一度一緒に仕事をしてみたいと思う人はいますか?

 また仕事をしたい人はたくさんいます。でも、誰かと仕事をする場合はほとんど、たまたまそういう話が持ち上がって偶然にコラボレートすることが多いのです。あまり考えることに時間を割いたりはしません。誰かから仕事の連絡が来ないかと待っているのは、少々奇妙な感じに思います。

 ファッションに関しては、ちょっとした遊び心でグッチとコラボレーションしたことはありますが、私自身は30年間、音楽のことについて学び、経験を積んできました。これは、ファッションデザイナーや時計職人にとっても同じことで、彼らも長い経験を積んできて今があるのだと思います。生涯をかけて真剣にモノづくりをしているわけですから、私が唐突に服を作ってみたいとか、これやあれをしてみたいと言いだすのは、彼らに対して失礼な気がします。カニエ・ウェストを批判する気はありませんよ(笑)。彼は、しっかりとファッションを勉強してデザイナーをやっているのですから。ただ、私としては他のものに目を向けるよりも、まだまだ自分の音楽だけを追究していかなければならないと思っています。私が尊敬するクインシー・ジョーンズやジョージ・マーティン、そして彼らが成し遂げたあらゆる偉業について思うとき、彼らのような偉大なアーティストになるために、私も日々精進していかなければならないと実感しています。

年齢を重ねるにしたがって、時間との付き合い方は変わってきましたか?

 年を取ること自体は、何も心配していません。私の最初の成功は、エイミー・ワインハウスやリリー・アレンと共演したときで、既に30代になってからのことです。今でも音楽を作ることができて、人々が自分の曲を聴いてくれているのは、本当に幸せなことだと思っています。以前は、自分の抱える仕事に対してストレスや不安を感じていたこともあります。すべてのプロジェクトを完璧にこなすためにいつも時間に追われていて、チャンスを逃したくなかったのでどんな仕事も断ることができない状態でした。しかし、最近手がけたプロジェクトを通じて、自分がいいと思ったことのみに絞ることで、いい仕事ができるということがわかってきました。すべてをこなすことは難しいものです。プロジェクトが本当に必要かどうかを見極めて、必要であれば進むべきだということを学びました。とはいえ、仕事中心の生活は相変わらずで、ほとんどの時間をスタジオで過ごしています。根っからの仕事好きで、仕事を仕事と思わずにやっているところがあります。一方で、人生の中に仕事以外での幸せを見つけ、仕事とプライベートのバランスをとることが必要なことがわかってきました。まさに今、そのバランスについて日々取り組んでいます。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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