SIGNATURE STYLE

マーク・ロンソンの流儀

December 2018

text ross povey

着用の時計はショパールの「L.U.C タイムト ラベラー ワン」。
photograph by courtesy of chopard

どのような背景で時計に興味をもつようになったのですか?

 正直なところ、これまでの人生において、あまり物に執着することはありませんでした。10代の頃には、DJの稼ぎだけでは高級時計を買う余裕もありませんでしたが、いつもクラシックウォッチの美しさとそれを身につけることで自分らしさを表現できることに憧れを抱いていました。自分にとって特別なもの、他の誰のものでもないものを手にすることは素晴らしいことです。そういうものに私は惹かれます。

ショパールのL.U.Cウォッチは、あなたのスタイルにどのように反映されていますか?

 L.U.Cは、シンプルでクラシックなデザインの中に、極めてエレガントで美的感覚溢れる要素が込められた逸品であると心から思います。L.U.Cから受ける魅力は、音楽から感じるとるものと共通する点が多いのです。私は常に流行に左右されない不朽の作品、すなわちどんな時代にもマッチする音楽を制作することを念頭において仕事をしています。これは時計をはじめ、あらゆるデザインについても同じことがいえるのではないでしょうか? 人々は時代を超越したもの、決して古臭くならず、現代性をも感じさせるものを求めています。方向性さえ見失わなければ、それはいつの時代にも受け入れられるものとなるでしょう。

 これまでいくつかのブランドから製品をプロモートしてほしいというオファーをいただきましたが、実際に自分が身につけたいと思ったものでなければお断りしてきました。昨今では、どんな商品でも推薦する人がいますが、私自身が尊敬する人たちはみんな、常に自分に対して誠実な人ばかりです。私にとってL.U.Cは美しくエレガントなウォッチであり、実際に身につけたいと思えるのです。

L.U.Cは、ジェントルマンのためのコレクションですが、あなたは現代の「ジェントルマン」というものをどのように捉えていますか?

 ジェントルマンの所作というものは、自分自身および周囲の人たちに対してどのように振る舞うかによって決まってくるものだと思います。私の母親は非常に厳格な人だったので、正しいマナーで礼儀正しい態度を常に取るように教育されてきました。自分自身でも誇れるような行動を取りたいと思っていますが、具体的な言葉で表現することはなかなか難しいものです。

 最新アルバムでは、スティーヴィー・ワンダーにハーモニカを演奏してもらったのですが、どうやって彼を説得したのか、いろいろな人からよく聞かれます。私は単に、彼に心を込めた手紙を書いただけなのです。最近では手紙を書く人が少なくなりました。仕事を依頼するときでも、マネージャーに電話をするか、挙句の果てにはツイッターでやり取りするような時代。時間をかけて相手を思いながらパーソナルなメッセージを送ることの大切さを、みんな忘れてしまったように思えます。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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