April 2024

“SARTORIA RAFFANIELLO”に聞いた

初めてのフルオーダー成功のコツQ&A

text hiromitsu kosone
photography makoto koike

全体的に柔和な印象を漂わせつつ、ラペルからフロントカットにかけての歪みないラインやクリーンな肩周りに洗練を感じる仕立て。ウエストからアームホールにかけての切れ上がりも美しい。

Q8:サイズが変わった場合、お直し代の目安は?
A:体重の増減でお腹周りが変わったなど、多少の調整であれば基本的に無料でお受けします。デザインの変更や大幅な体型変化の際には工賃を頂戴しています。

Q9:テーラーにとって「これはやめてほしい」ということは?
A:ビスポークテーラーですから、基本的には何でもワガママをおっしゃってください。ただ1点だけ、スーツの製作中に過剰な筋トレをなさると、仕立て上がりに悪影響を及ぼす恐れがあります。特に大胸筋が大きくなると、スーツの要所である胸周りのバランスを途中で大幅に変える必要が出てきます。胸周りの仕立ては非常に微妙なバランスで成り立っているので、ここを途中から大幅修正するとかなりの大工事になるのです。ちなみに太ってお腹が出てきたなどは、意外と調整は難しくないのでご安心ください。

Q10:サルトリア ラファニエロのハウススタイルは?
A:仕立てのベースはナポリから影響を受けています。柔らかい着心地と、美しい胸のボリュームは強く意識していますね。ただ、これ見よがしな“手縫い感”は極力排除して、あくまでもクリーンに、かつ手縫いならではの味わいを醸し出るように努力しています。スーツの場合、ほとんどはビジネス用に仕立てられますから、柔らかくても崩れた見た目にならないよう注意していますね。ご注文時にご要望をお伺いして、よりパリッと見せたいというときには毛芯の硬さを変えることもあります。それから縫製に関しても、できるだけミニマルで都会的に見せるよう心がけています。ラペルのステッチは端ギリギリのところを縫うようにしていますし、ゴージラインは特に細かく縫製しています。ピッチでいうと0.2~0.3㎜くらいでしょうか。こうすることでゴージラインが溶け込んだようにうっすらと馴染んで、上襟とラペルが一体化したように見えるのです。また肩線も同様に、できるだけ段差をなくしなだらかに縫製しています。

上:肩線は斜め後ろに向かってずらしている。縫製は片倒しだが、極力凹凸を抑えてなだらかに抑えるよう工夫しているとのこと。左下: 東さんが特にこだわっていることのひとつが肩の立体感。横から見たとき、肩の上面、前身、後ろ身と3つの“面”でフィットしている雰囲気が理想だそう。右下:胸のダーツを袖まで通す「タリオ ダ バンディ」と呼ばれる手法はナポリの仕立て服に特有のもの。ダーツを取ることで胸のボリュームやウエストのシェイプをコントロールし、立体的に見せられるのだという。

ゴージラインがうっすらと溶け込んだようになっている点に注目。極めて細かいピッチで縫製することでこのような表情に仕上げている。極めて高いレベルの手縫いでしか実現できない芸当だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 28
1 2 3 4 5

Contents