OUT OF THE FIRE

炎の男、ニキ・ラウダ

March 2020

text nick foulkes
issue10

1976年のモナコGPでマシンを操るラウダ。

エンツォとモンテゼーモロ ラウダは1973年をペイドライバーとしてスタートしたが、ベルギーGPでの5位入賞で給料を得るようになり、7月には、シルバーストーン(イギリスGP)にて、第1コーナーを曲がるまでに9位から2位に浮上するという見事なダッシュを決めて、観客をあっと言わせた。

 この若きドライバーに目を留めたのが、当時26歳のルカ・ディ・モンテゼーモロであった。特大のアビエーターサングラス、大三角帆のように大きなタイ、風になびくラペルで身を装った彼は、モデルと見まがうばかりだった。

 “アッヴォカート”・アニェッリの秘蔵っ子であり、どんな言語も流暢かつ上品に話すモンテゼーモロは、エンツォ・フェラーリによって抜擢されたのだ。それは、1964年からチャンピオンの座を逃し続けてきたレーシングチーム、スクーデリア・フェラーリを救うという任務だった。

「私は茶番の真っ最中に着任したんです」。混沌としたフェラーリチームと、迫力に欠けるマシンについて、彼はこう語った。だがモンテゼーモロは、青白い顔をしたラウダの中にチームの未来を見た。

 ラウダとモンテゼーモロはヒースロー空港近くで内々に会って契約を結んだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 31
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