OUT OF THE FIRE

炎の男、ニキ・ラウダ

March 2020

text nick foulkes
issue10

1976年のスペインGPでのラウダ。

人々がスリルを求めた時代 1970年代は皆が気力に満ち、肩で風を切って歩いた時代だった。長髪、大ぶりのサングラス、フレアードパンツ、ディスコ音楽、まき散らされる炭化水素、行きずりのセックスであふれたあの時代、カーレースは一種の高速ロシアンルーレットだった。

 当時のレースは、血が流れ、命が失われる剣闘士のアリーナに他ならなかった。古代のチャリオットレース以降、あれほど猛スピードのスリルが大衆娯楽として提供されたことはなかった。F1選手権は1950年に始まり、最初の四半世紀で38人の若者がレース中に命を落とした。1970年代は特に死者の多い10年になりつつあった。

 死の影が付きまとう熱狂が、参加者を生き急がせる。そんな当時を描いたのは、76年シーズンを舞台とし、ラウダとジェームス・ハントのライバル物語、2013年の映画『ラッシュ/プライドと友情』だ。ハントのような男に敬意を表して創刊されたのがTHE RAKEである。

 彼は、洗練された言葉遣い、端正な容姿が特徴で、栄光のためなら平然と命を懸ける怖いもの知らずであった。ハントのチーム、英国貴族のヘスケス卿が運営したヘスケス・レーシングは、あえてスポンサーを持たなかった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 31
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