MAGNETIC IMAGING MARLON BRANDO

銀幕のゴッドファーザー:マーロン・ブランド

June 2023

text stuart husband

テネシー・ウィリアムズ原作の映画『欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキー役を演じるマーロン・ブランド(1951年)。

『デジレ』(1954年)、『八月十五夜の茶屋』(1956年)、『サヨナラ』(1957年)などの低調な作品がブランドの人気をおとしめた。そして映画界で横暴に振る舞うようになった。

 あるときは、エキストラに消防ホースで水をかけた。『野郎どもと女たち』(1955年)では、共演者のフランク・シナトラと揉めた。何度もテイクを重ねるのが好きだったブランドに対して、シナトラは「ここは俳優養成所じゃないぞ!」と怒鳴ったそうだ。

 1962年、パラマウント社が彼の監督デビュー作である西部劇『片目のジャック』(1961年)を勝手に再編集したとき、彼の怒りは頂点に達した。

「かつて抱いていた芸術家であることへの自負は、今や大きな、冷たい希望に過ぎなくなった」と彼は言った。

 そして、ブランドは次の作品『戦艦バウンティ』(1962年)で作品を台なしにしたと非難された。ブランドは友人のタヒチでの結婚式の飾りつけのために撮影スタッフを行かせたり、自分のパーティのために高価な食べ物と飲み物を飛行機で取り寄せたりした挙げ句、巨大な船のセットを再び作らないと、映画を降板すると制作陣を脅したのだ。

『サタデー・イブニング・ポスト』紙は、“6千万ドルが流出―マーロン・ブランドの叛乱”という見出しで、このスターが延々と脚本の書き直しを要求していることを報じた。監督ルイス・マイルストーンは、「小うるさい子供のような役者に、高価な映画を完全にコントロールさせるなんて、経営陣は自業自得だ」と怒鳴った。

 ブランドは、「ある意味、私の中年期は、“ファック・ユー”の時代だったと思っている」と悔やんだ様子は見せなかった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 50
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