MAGNETIC IMAGING MARLON BRANDO

銀幕のゴッドファーザー:マーロン・ブランド

June 2023

text stuart husband

『地獄の黙示録』におけるカーツ大佐。

 スクリーンでの名演技を語るとき、ブランドは必ず登場する。映画版『欲望という名の電車』(1951年)のコワルスキー、『乱暴者』(1953年)のジョニー・ステイプラー、『波止場』(1954年)のテリー・マロイ、『ゴッドファーザー』(1972年)のドン・コルレオーネ、『地獄の黙示録』(1979年)のカーツ大佐などである。

 ブランドは、演出家スタニスラフスキー・メソッドの教えに根ざしながら、彼自身のカリスマ性と磁力によって、その演技を芸術の粋にまで高めていた。「彼の演技を見るのは、ジャズの演奏を見るようだった。音符はそこにあるが、彼独自の方法で演奏されているのだとラーは書いている。

 作家トルーマン・カポーティは、ブランドを「重量挙げ選手の腕、チャールズ・アトラス(ボディビルダー)の胸、張りのある肌、広く高い額」という強烈な身体性に加え、「小さな、ひらひらした手、ふっくらとした唇、人を安心させる官能的な表情、そして、探るような、まるで十代の若者のような声」を持っていると評した。

 ブランドは、俳優ハンフリー・ボガードの威厳と、詩人ジョン・ケルアックの感性を合わせたような両面性を備えていた。これはネブラスカ州での生い立ちによって育まれたものである。

 酒乱で虐待癖のある父親と、アル中で芸術家肌の母親の間に生まれた彼は、若い頃から繁華街のバーに入り浸っていた。陸軍学校を中退し、聖職に就くことも考えたが、女優をしていた妹ジョスリンを追ってニューヨークへ渡った。「彼は人生において、永久に真実であるものを見つけようとし、そのために命を捨てる覚悟があるのだ」と、ブランドの友人はカポーティに語った。

「あんな強烈な個性の持ち主には、他のことは何もできないだろう」と。それが“演技”だった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 50
1 2 3 4 5

Contents