GUIDE TO MILANESE TAILORING

ミラノの4大テーラー、徹底研究

November 2020

text fabio attanasio photography massi ninni

カルロと彼の同僚たち。A.カラチェニのワークショップにて。

「私たちは組立ラインではありません」とマッシミリアーノは説明する。

「資格を持ったテーラーが、最初から最後まで、ひとりでジャケットを完成させます。これによりわれわれは、自分たちの仕事の細部にまで目を配ることができるのです」

 A.カラチェニのスタイルは、自然な採寸よりもやや広めの肩幅で、胸元は控えめに構造的になっており、ジャケットの前身頃は、胸元に密着するラペル、袖と完璧にフィットするアームホール、骨盤の上に位置するポケットの3つの重要なポイントで、身体に寄り添うようになっている。このように複雑な解剖学的手法を用いて生地を成形する過程では、さまざまな工夫がなされている。

 その中でも、ジャケットの前身頃には、ポケットに向かって縦に2本の縫い目があり、美しい裾を形作っている。通常、ひとつ目の縫い目はまっすぐで、ふたつ目の縫い目は曲がっているが、ここでは両方とも曲がっている。長さも機能も異なる曲線を描いているのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Contents