GUIDE TO MILANESE TAILORING

ミラノの4大テーラー、徹底研究

November 2020

text fabio attanasio photography massi ninni

—ミラノテーラーその1—
【A.カラチェニ】
 カラチェニが2軒あれば、喜びも2倍になろうが、アルファベット順にAから始まるほうから紹介しよう。Via Fatebenefratelli,16に位置するA.カラチェニだ。もともとはキエティ県のオルトーナ・ア・マーレ(ローマと同じ緯度で、反対側の海岸線に接している)にあったが、現在ではミラノとローマにいくつかの支店を持つようになった。

 このミラノのオーダーメイドのメッカで、カルロ・アンドレアッキオにお会いした。工房の創設者アウグストの息子マリオの義理の息子である。カルロと彼の家族はこのアトリエを経営しており、30人のテーラーを雇い、年間400着のスーツを生産している。彼が身に着けているのは、ブルーのフランネルのブレザーで、フロントには金ボタンが6つ付いている。

「このブレザーは38年前のもので、1982年に作られたものです」と言ってポケットの中のラベルに縫い付けられた納品日を見せてくれた。

 新規顧客のカッティングは、カルロとマッシミリアーノ・アンドレアッキオだけが担当する。なぜなら、カットにはファミリーの秘密があるからだ。それは世代から世代へと受け継がれてきたものだ。再訪者には、カルロやマッシミリアーノが以前にデザインしたモデルを踏襲することを許された、いわゆる“ストロンカトーレ”がいる。もちろん、クライアントの体重が劇的に変化しない限り、だが。彼らは、A.カラチェニの作品は “プロダクト “ではないという。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
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