ミラノの4大テーラー、徹底研究

　フロントは、まずまっすぐな縦の縫い目、ポケットの中の横の縫い目、そしてその下の2番目の長い縫い目があるようにカットされている。

「実は、私はこれが好きではない」とアルドは言う。私も彼の意見に同調せざるを得ない。このフロントのデザインは、既製服のラインに近いのだ。

　全体を見てみると、このカッターは裾をきれいにまとめたジャケットも作っているが、彼は最初のカットのほうが好きらしい。なぜなら、こぎれいなフロントを実現できるからである。それ以外だと水平方向の縫い目で作られた余分な生地によって、フロントがもたついてしまう可能性があるそうだ。

　オーナーの好みと実際のカッターの好みを一致させるのは簡単ではない。従業員との関係について聞くと、アルドは皮肉を込めて次のように答えた。

クリスティアーノ・ゼルボーニ氏。

ゼルボーニ氏、ファビオ・アッタナシオ（筆者）、アウレリオ・ラモナルカ氏。