EYE OF THE HAWKE

ホークの鋭い瞳
俳優:イーサン・ホーク

November 2022

text tom chamberlin
photography charlie gray
fashion direction grace gilfeather

スエードオーバーシャツ 参考商品 Ralph Lauren Purple Label
ジーンズ 参考商品 Polo Ralph Lauren
ブーツ Barbanera
時計 参考商品 Rolex

 おわかりの通り、ホークは当時まだ若かったものの、エリートの役柄を演じる力を既に獲得していた。

「若さの素晴らしいところは、経験がないにもかかわらず、理想論を持っているということ。僕は演じることが大好きだった。ショーン・ペンやロバート・デ・ニーロ、ジョン・マルコヴィッチなど、尊敬する人たちのインタビューを読み漁っていたけど、彼らは常に情熱を持っていたし、自分の仕事に真摯に向き合っていた。芸術とは、ある種の冗談のようなもので、面白いことを真剣にやることだ。例えばサイモン・ラッセル・ビールと一緒に仕事をすると、この人がものすごい成功を収めているのは偶然ではなくて、仕事にひたむきに打ち込む優れた頭脳の持ち主だからだとわかる。僕はまだ若かったから、うまく演技するために必要となるものが自分にないことがわかっていたし、並大抵の努力ではダメだともわかっていた。少しは狂ったように取り組まないと、好きなことを仕事にするチャンスはないだろうね。例えばサックスを1日8時間練習するのは正気の沙汰ではないけれど、そうでもしなきゃチャーリー・パーカーにはなれないよね」

 ホークは俳優という職業について、英国的な見解を持っている。演劇を重視する姿勢を称賛する考えの持ち主だ。

「アメリカではどうにかして“成功すること”が目標になっている。才能があるかどうかで個性を見る文化があって、才能さえあればその道のどこかで見いだしてもらえる。一方でイギリスには演技についての指導や教育の文化があって、演技は職人技術のように扱われている。だから若くして成功しても、技術を持った一角の俳優であるとは限らない。デンゼル・ワシントンが超一流の俳優になれたのは、イギリスの舞台俳優をお手本に腕を磨いたからだ。アメリカには、演劇に情熱を傾ける真の映画スターはほとんどいないからね。ハリウッドの映画製作の芸術は自我の炎を燃やすのに対して、演劇の世界はとても謙虚だと思う。あまりにも若い年齢で自我を手に入れると、演技の技術を磨くための道が崩れてしまうんだ。『君はもう才能がある』って認められるんだからね。その感覚が、アメリカの若い役者に悪影響を及ぼすんだよ」

 後になってから思えば、試行錯誤しながら学んだことがとても多いと認める。

「若い頃はすべてのチャンスがとても大事だった。自分のすべてを注ぎ込んで作ったものでも、撮影や編集がまずければ痛い目に遭う。『いまを生きる』は、撮影がジョン・シール、監督がピーター・ウィアーで、脚本はオスカーを獲ったけど、自分が本当にレベルの高い人たちと仕事をしていたことに気づいていなかった。映画業界ってこういうものなんだと思っていた。ピーター・ウィアーがどれだけ非凡な人か、知らなかったんだ」

GROOMING: MELISSA DEZARATE
PHOTOGRAPHY ASSISTANT: ZACK FORSYTH
BIRD: FALCONRY EXCURSIONS, NEW YORK
PHOTOGRAPHED AT VANDERVOORT STUDIOS, BROOKLYN

THE RAKE JAPAN EDITION issue 48
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