April 2022

Exclusive Interview  MATT DAMON

俳優:マット・デイモン
愛され俳優の素顔

text & creative direction tom chamberlin
photography grey williams
fashion direction grace gilfeather
special thanks to the Martinez hotel, Cannes, and Riva Yachts

シャツ Budd Shirtmakers パンツ 参考商品 Brunello Cucinelli 時計「アルパイン イーグル ラージ」自動巻き、ルーセント スティール A223製ケース&ブレスレット、41mm ¥1,617,000 Chopard ボート「RIVAMARE」¥165,000,000(※為替により変動の可能性あり)Riva

 とはいえ、世に認められる快感を求める心や、この世界で名を馳せたいという野望がなくなったわけではない。

「世の中の人々が自分をどう思うか気にすることからは解放されなかった。吹っ切れればいいけれど、それができるのは修道士並みの人だろうね。自分の作品はやっぱり皆に気に入ってほしいと思う。作品は自分の一部であり、自分が世の中に送り出しているものだから、僕と同じように好きになってほしいと願うよ」

 オスカー獲得後の数年間も、デイモンは驚くべき数の作品に出演した。

「決してもったいぶらなかった。仕事をし続けるのが僕のやり方だった。それがベストな自分になる道だと思っていたし、今でもそう信じてる。あえて楽じゃないほうに自分を追い込み続けたんだ。僕は直感を信じてきたと思う……。“あの役者好きだな、あの監督好きだな、脚本が素晴らしい、よしやろう、経験になるぞ”ってね。オスカーを手にしたおかげで、それが自由にできるようになった」

名作映画への出演は続く 1998年、デイモンはポーカー・スリラー映画『ラウンダーズ』に出演し、さらにスティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』でライアン役を演じた。後者もまたアカデミー賞受賞作であり、映画史に残る重要な戦争映画のひとつといえるだろう。ネットの情報によれば、同作の出演者たちは身体づくりのためにブートキャンプと同等の過酷な訓練を受けたが、デイモンは意図的に外されたという。事実かどうか尋ねてみた。

「うん、それはスピルバーグ監督のアイデア。訓練がいつ始まるか訊いたら、“君は参加しないことになっている”と言われてね。僕が撮影で合流するときに、他の出演者たちから反感を買ってもらいたいと説明されたんだ。そしてその通りになったよ。みんな訓練のことばかり話してた」

 翌年の1999年、デイモンは『ドグマ』でベン・アフレックと再び共演し、天国への帰還を企む堕天使のコンビをハチャメチャに演じてみせた。だがこの年の大型プロジェクトといえば、アンソニー・ミンゲラ監督の『リプリー』だろう。この作品で印象的なのは、出色の演技だけでなく、高度成長期のイタリアを表現する衣装やディテールだ。デイモンは同作の思い出話として、今は亡きミンゲラ監督の手腕について語ってくれた。

「アンソニーは(パトリシア・)ハイスミスの原作を忠実に辿ったんだ。とにかくディテールに対して凄まじい観察力を持っていた。彼がいたからこそ、作品に携わるそれぞれの部門に世界レベルのプロフェッショナルが集まったんだ」

 デイモンにとって、トム・リプリーは“変身”を伴う役だった。共演のジュード・ロウに間違われなければならなかったのだ。「彼のような外見になることを課せられたわけだけど……まあ不可能だよね。せめて体型だけでもと思って毎日10km走ったり、あとは無駄かもしれないけど、ずっと彼のそばにいてみたりしたよ」

本記事は2021年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 43

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