April 2022

Exclusive Interview  MATT DAMON

俳優:マット・デイモン
愛され俳優の素顔

text & creative direction tom chamberlin
photography grey williams
fashion direction grace gilfeather
special thanks to the Martinez hotel, Cannes, and Riva Yachts

スティルウォーター舞台は南仏マルセイユ。殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、アメリカ人の父親が異国の地で真犯人探しに奮闘するというサスペンス・スリラー。今年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され、5分間のスタンディングオベーションを受けた本作。今年度の賞レースにも期待したい。© 2021 Focus Features, LLC.
監督:トム・マッカーシー/出演:マット・デイモン、アビゲイル・ブレスリン、カミーユ・コッタン、リル・シャウバウ、イディル・アズーリほか/配給:パルコ ユニバーサル映画

 2000年代に入ると、映画『タイタンA.E.』(2000年)、『オーシャンズ』シリーズの第1作『オーシャンズ11』(2001年)、『ボーン』シリーズの第1作『ボーン・アイデンティティー』(2002年)などへの出演により、デイモンの人気と商業的な信頼度は高まり、出演料も跳ね上がった。ちなみに『ボーン・アイデンティティー』が公開されたのは、9.11事件の9カ月後だった。作品の結論は観客の判断に委ねられたが、以降に続く4作はアメリカの情報機関の権限に関する意見表明であり、平和主義者にも強硬外交論者にもメッセージをもたらすものだったといって差し支えないだろう。

「3作目まではブッシュ政権と大いに関係のある作品で、時代を色濃く反映していたと思う。水責め、頭巾を被せられた人への発砲、人身保護令状の請求権の停止など、当時の現実世界で行われていたあらゆることを盛り込もうとしていた」

 今日においても、『ボーン』シリーズで扱われているテーマは遠い昔の出来事ではない。非道な手段によって行使される政治権力の存在を考慮すると、あのようなアメリカの情報機関はポスト・トランプにおいて間違いなく重要に思える。今改めて鑑賞してみると、シリーズが担ってきた役割が見えてくる。純粋なアクションものとも政治ものともいい切れない多義的な位置づけが、最適なのかもしれない。デイモンはこう話す。

「僕らはポップコーンを片手に楽しめる映画にしたかったし、新鮮で独特で刺激的なアクションを見せたかったけど、同時に何らかのメッセージも込めたかった。いろんな要素を詰め込んだんだ」

『ボーン』シリーズ1作目には、刃物を持った刺客にボールペンで応戦するシーンが登場し、たちまち有名になった。新しいアクションヒーロー像を見事に象徴する、重要なシーンだった。迷彩服に身を包み、銃を腰だめ撃ちする時代は過ぎ去ったのだ。

 以前、ピアース・ブロスナンにインタビューした際、彼はアクションに対するボンドのアプローチを変える上でジェイソン・ボーンのスタイルが役立ったと語っていたし、その後のダニエル・クレイグの新しい007の戦闘スタイルも、従来のボンドのコミカルなものとは異なり、全体的に滑らかで技巧的なものになっていた。

本記事は2021年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 43

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