July 2018

DIAMOND GAL

世界を魅了した“永遠の妖精”
オードリー・ヘプバーン

text david smiedt

『ティファニーで朝食を』(1961年)で、自由奔放に生きる主人公ホリー・ゴライトリーを演じたオードリー・ヘプバーン。
photo by Getty Images

 天使のような優しさを持つ彼女には、型破りな一面もあった。映画『噂の二人』では、シャーリー・マクレーンと同性愛を疑われる親友同士を演じているが、これは『ティファニーで朝食を』と同年の作品でもある。

 ハンフリー・ボガート、ゲイリー・クーパー、レックス・ハリソンといった年の離れた共演相手との恋愛模様を描いた作品に出演してきたオードリーも、1960年代も後半になると明らかに落ち着いてくる。露出を控え、以降の半生はユニセフの慈善活動に傾倒していった。しかしこの活動が彼女の名声をさらに高めていった。

 英語・オランダ語・フランス語・スペイン語・イタリア語の5カ国語を操る彼女は、個人的な危機―離婚、5回の流産、2番目の夫の火遊び―の最中も精力的に慈善活動を展開し、世界数十カ国を訪れ、貧しく苦しむ子供たちと接してきた。彼女は慈善活動を通じて、持ち前のバランス感覚と自身の有名人としての立場が、飢餓や幼き者や弱き者への虐待、先進国の二面性などといった受け入れがたい問題を提起するための基盤となることを証明したのである。

 まるで悪魔たちと無意識のうちに契約を交わしていたかのようだった。自らの人生を捧げる代わりに、オランダの通りで銃殺された若者たちの魂、そして栄養失調で瀕死の状態にあるソマリアの子供たちの声を代弁させてほしいと。

 1993年、その声は途絶え、彼女はガンで亡くなった。葬儀では、彼女の才能をいち早く見抜いて『ローマの休日』で共演したグレゴリー・ペックが弔辞を送った。オードリー・ヘプバーンは1956年に「私は本当に運が良かっただけ」と語ったそうだ。いやいやマドモアゼル、運が良かったのは、あなたに出会えた私たちのほうだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 19
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