COOL MUTHA FUQUA

クロサワのDNAに忠実な鬼才

June 2017

text nick scott photography piers cunliffe
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クリス・プラットに指示を出すフークア監督。

いつも目指しているのは、どこまでも続く緊張感 観客を引き込みたいんだ。前のめりになって何かを感じてもらいたい。何かが起こりそうな雰囲気がじわじわと高まっていく。フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』で、川を遡っていくにつれて事態がどんどん悪化するのを感じて「ボートから降りるな!」と叫びたくなるようにね。

人間誰しも、理解し合える誰かと出会うもの アスリートでもジャズミュージシャンでも、阿吽の呼吸で通じ合う相手はいるものだ。相手を見ないでボールを投げても、狙った場所に必ずいてくれる。以心伝心というやつだよね。そこにはもちろん信頼関係もある。今回で3度目のタッグを組んだデンゼル・ワシントンとは、まさにそんな感じだね。

デンゼル・ワシントンの肌の色なんてどうでもいいこと。彼のパワーや存在感を考慮したら二の次だ 僕が観たかったのは、その力強い存在が馬に乗っている姿だった。彼が黒人だということはどうでもよかった。映画館に足を運んだ人が評価するのは、面白いか面白くないかだけ。中には「有色人種を起用するのはピンとこない」と言う人もいたけど、きちんと歴史を学んで真実を知るべきだと思う。実は、開拓時代の西部は多様性に富んでいたんだ。世界中からやってきた人々が入植していた。ロシア人にアイルランド人、メキシコ人、いろんな人種がそこにいた。僕はそんな実情をきちんと作品に反映させたかった。イ・ビョンホンのようなアジア人も本当にいたんだよ。“カウボーイ”という言葉は“ブラックカウボーイ”から来ているんだけど、あまり知られていない。カウボーイはみんなクリント・イーストウッドやジョン・ウェインのような人物だと思われているからね。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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