COOL MUTHA FUQUA

クロサワのDNAに忠実な鬼才

June 2017

text nick scott photography piers cunliffe
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最新作『マグニフィセント・セブン』で凄腕のスナイパーを演じるイーサン・ホーク。

映画監督という仕事はどこまでやっても満足できない どのコマ、どのショットも引き立てたいと思ってしまうし、さらにワンランク上の仕事をしたいという気持ちが自分の中にある。でも、いつもうまくいくとは限らない。後になって前のものが美しく見えてうまくいったんだと気づくこともあるけれど、すべてのシーンが目を見張るような出来に仕上がるわけじゃない。日は沈んでいくし、時間は迫ってくるし、資金はどんどん出ていく。次回作の準備ができたかどうかもみんなに注目されているしね。もちろんまだ準備はできていないけど。これでも精一杯やってるんだ。

名優はでたらめなことはしない 撮影の中断を嫌う役者もいるが、それはまだやりたいことがあるからだ。デンゼル・ワシントンやイーサン・ホークのような役者が撮り直しを望むときは、必ず何かしたいことがあるとき。そんなときに先を急ぐのはもったいない。彼らが魔法のようなプレゼントをくれようとしているんだから。クリス・プラットやヴィンセント・ドノフリオのファンからも、見せ場を奪いたくないしね。

ボクシングは僕にとってシェイクスピア劇のようなものだ ハイ、ロー、そして裏切り。マネージャーはボクサーを引き抜き、プロモーターは上前を撥ね、男たちは馴れ合う。何週間もトレーニングしてきたボクサーは獣物になって、愛する人を置き去りにして試合に行く。そして帰宅したら、その暴力的なエネルギーを自力で解放しなきゃならない。精神科医が家でカウンセリングをしてくれるわけじゃないからね、大変だよ。

ボクシングは、ストリートから這い上がり、無名の一文無しから世界チャンピオンになれるスポーツだ モハメド・アリは誰かに自転車を盗まれ、犯人に鉄拳制裁を加えるためにボクシングの世界に入った。マイク・タイソンはストリートから這い上がって、ボクシングの世界チャンピオンになった。アメリカで大学に進学しなくてもできるスポーツは、ボクシングぐらいしかないだろう。時にはボロボロになって悲劇的な最期を迎えることもある。古代ローマの戦士のような力強さと大胆さの一方で、繊細な側面を併せ持つ奥深いスポーツだ。叩きのめしたファイター同士が最後には抱き合う。闘った相手に最大の敬意を払っているんだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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