COOL MUTHA FUQUA

クロサワのDNAに忠実な鬼才

June 2017

text nick scott photography piers cunliffe
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『トレーニング デイ』(2001年)でオスカーを獲得したデンゼル・ワシントン。

もし自分が映画監督になっていなかったら、軍隊にいたと思う ジェット機のパイロットになりたくて、エンジニアリングを専攻したんだ。それにボクシング以外にいろんなスポーツもやってきた。バスケでのポジションはポイントガードで、ジャンプしてダンクシュートを決めることだってできたけど、チームメイトはあっという間にマジック・ジョンソンやマイケル・ジョーダンのように背が伸びて、しかも僕と同じスピードでプレイができた。だからさすがにNBAには手が届かないと悟って、いくつかの決断をしなきゃならなかった。

どんなものにももととなる題材がある クロサワはシェイクスピアから題材を取り、セルジオ・レオーネはクロサワから題材を得たように、どんなに独創的な作品にもインスピレーションの源があって、誰もが古典に立ち返る。フョードル・ドストエフスキーの『白痴』を読めば、人間がいかに複雑な存在かがわかるだろう? コマ割りや構図のデザインといった編集作業をしていたら、自分がクロサワやジョン・フォードの構図を参考にしていることに気づいたよ。

映画製作の鍵は企画と忍耐 銃撃戦の中、通りの真ん中を全速力で走るデンゼル・ワシントンに合わせてカメラを動かすシーンも撮影した。彼の左右に男たちがいて、背後で100人の男たちが煙の中から出てくるシーンでは、安全を確保しつつ全員を動かし、もちろんカメラも動かしながらすべてを一度に撮影しなければならなかった。しかも43度の暑さの中でね。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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