December 2017

BRIGHT LIGHTS, B.I.G. CITY

24歳で散った“ビギー”

text by christian barker

 93年に元恋人が自分との娘を出産し、96年に妻エヴァンスとの間に息子が誕生して父親になったビギーにとって、子供たちが自分と同じ苦労をしないよう、一家の大黒柱でいることが最重要だった。

 ビギーの作品は幅広い批評家から絶賛されたが、本人は高尚な芸術的野心など抱いていなかった。彼にとっては、商業的、物質的な成功こそが大切だった。

「ラップにおける俺の責任は、家族がまともな暮らしを送れるよう、ヒット作を出し続け、レコードを売り続けることさ」

 しかし、彼の家族観がそれ以上広がることはなかった。皮肉にも“誠実”を意味する名を持つフェイス・エヴァンスとの結婚後、何年も経たないうちに、ビギーはラップの愛弟子であったリル・キム・ジョーンズと公然たる不倫関係になった。

 さらに、95年にはティファニー・“チャーリー・バルティモア”・レーンとも(エヴァンスやジョーンズと並行して)付き合い始めた。恋人が増えれば、問題も増えるものだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 19
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