April 2018

ALL THE RIGHT MOVES

トム・クルーズ
—トップ俳優の努力と執念

text shiho atsumi All Photo by Photofest/Getty Images

スペインの新鋭アレハンドロ・アメナーバルの『オープン・ユア・アイズ』をリメイクした『バニラ・スカイ』(2001年)。原作品でヒロインを演じ、同作でも抜擢されたペネロペ・クルスは、当時のトムの恋人でもあった。
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ハリウッドで彼ほど過小評価され
誤解されている人間はいない
 傑作サスペンス『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー脚本賞を獲得したクリストファー・マッカリーは、『ワルキューレ』(2008年)で初めてトムと仕事をし、『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)以降のほとんどの作品で脚本制作にかかわっているトムの懐刀だ。新たなフランチャイズ「ジャック・リーチャー」シリーズの第1作『アウトロー』(2012年)で、監督を務めた彼は言う。

「トムは新人監督を映画に据えて、自らバックアップする。リスクは大きいのに、個人的な影響力を使って売り込み、そのキャリアを広げてくれているんだ。トムが一緒に仕事をした人たちを見れば、彼が監督たちに対してしてきたことがわかる。オリジナルが成立しない時代に、そうした作品を作るために努力してきたことが。尋常じゃないよ。彼には何の得にもならないんだ。彼ほど過小評価され、誤解されている人物はいない。彼自身は、そんなことどうでもいいと思ってるだろうけど」

 2017年、『ザ・マミー/ 呪われた砂漠の王女』で「ダーク・ユニバース」シリーズが新たに加わり、トムのフランチャイズは3つになった。その合間にも、革新的な映像の『オブリビオン』(2013年)、日本の小説を映画化した『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)、そして間もなく公開の『バリー・シール/アメリカをはめた男』と、出演作は枚挙に暇がない。

「ミッション:インポッシブル」シリーズ次回作の撮影中に負ったけがが気になるが、『トップガン』続編の撮影も年明けから始まるらしい。「この仕事が好きだし、プライドを持っている。だから中途半端じゃ済ませられない。何かをやるなら、すべてやる」と語る55歳のトム・クルーズは、一体どこまでいくのか。そしてその栄光の彼方に、何を見るのだろうか。

「僕は素晴らしい映画を作りたい。観客を楽しませ、彼らの心をつかむ映画をね。でもそのために僕が制御できるのは、自分が作品に注ぎ込む努力と、製作の過程で僕ら全員が手にした経験だけ。それがどうなるかは、その後にしかわからない。若い頃は“自分が何者か”を知る前に、他人に定義されたりもするけど、僕はその頃からわかっていたんだ。“映画が僕のやりたいこと、そして永遠にやり続けられることだ”ってね。現実を見ても、映画を作るなんて特権的なことだよ。自分が愛することをやれる状況を、当然だなんて思ったことはない。僕は世界で最高の人生を送っているんだよ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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