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トム・クルーズ
—トップ俳優の努力と執念

April 2018

text shiho atsumi All Photo by Photofest/Getty Images

父の死で再会した、自由奔放な弟とサヴァン症候群の兄との交流を描くロードムービー『レインマン』(1988 年)。トムが脱アイドル路線に踏み出した最初の作品。共演のダスティン・ホフマンはアカデミー主演男優賞を受賞。
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キューブリック作品を乗り越えた
演技派への変貌の10年
 だがこれは単なる「挑戦の10年」の幕開けでしかない。それまでの“健康的な体育会系”のイメージを覆すべく選んだ2本の法廷劇『ア・フュー・グッドメン』(1992年)、『ザ・ファーム 法律事務所』(1993年)、そして体重を激減させて挑んだ『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年)。極めつけは、天才スタンリー・キューブリック監督の『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)だ。トムは当時の妻だったニコール・キッドマンとともに、嫉妬と性的妄想の淫靡な世界に飲み込まれてゆく若い医師を演じている。

「スタンリーは、まずは共通の知人を介して僕の連絡先を手に入れファックスしてくるんだ。“こんにちは。この私の番号に電話してきてほしい。君にやってもらいたい作品について話したいんだ”っていう感じで。で、僕は電話をかけよう―とは思ったんだけど、ファックスを眺めながら30分くらい悩んだよ。“今電話すべきか? 何を話せばいいんだ?”ってね」

 当時、ハリウッド映画史上最長といわれた400日以上に及ぶ撮影期間を経て、映画は完成する。そしてそれだけの長期間、倦怠期の夫婦を演じたトムとニコールは―関連は定かではないが―映画公開後に離婚することとなる。

「最初から、ある程度の犠牲を払うことになると覚悟はしていた。でもスタンリー・キューブリックと働く栄誉を感じていたからね。僕らはこの映画を撮ることで、何を費やすことになったか。撮影の長さなんてどうでもよかった。だって僕は―そしてニコールも―思っていた。これは僕らにとって本当に特別な時間になるということをね。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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