Monday, June 24th, 2019

ADVANCE AUSTRALIAN FLAIR
オーストラリアからやってきた才能

大物たちを支える名脇役
『ゼロ・ダーク・サーティ』が公開されるまでには、既に次の大作の撮影が始まっていた。幻想的な作風で知られるバズ・ラーマン監督による、『華麗なるギャツビー』のリメイク作品である。
 この作品には大きな期待が寄せられていた。ハイスピードで展開するストーリーの中で、エドガートンはずっしりと重みを添えられる存在だ。彼が演じたトム・ブキャナンはいかがわしい人物であるにもかかわらず、その貫禄と体格のおかげで華やかな作品の中でもひときわ目を引く存在となった。
 こうして『華麗なるギャツビー』でレオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイアらと共演。そして次に出演した実録のクライム・サスペンス『ブラック・スキャンダル』(2015年)では、ジョニー・デップ、ベネディクト・カンバーバッチらと共演した。エドガートンは、実力派俳優を支える脇役を演じることについて、謙虚かつ前向きな姿勢を見せる。
「むしろ、作品の一番前や真ん中に立つことのほうが怖い。自分をムービースターと呼べることが前提だと思うし、映画がコケたら、それで評価されてしまうからね。ムービースターと一緒に仕事ができるのは、素敵なことなんだ。まず作品全体を引っ張る責任を負わなくていいから。その一方で、その術を心得ている人、つまり作品で一番前や真ん中にどう立つべきかわかっている人と肩を並べられる。彼らは、共演相手としても最高の人物だからこそ、いつもその立ち位置にいられるんだと思う」
『ブラック・スキャンダル』は、エドガートンが立て続けに出演したサスペンス映画のうちの1本である。もうひとつの作品、『ザ・ギフト』では、脚本、製作、そして自身初となる長編映画の監督も務めている。ジェイソン・ベイトマン演じるサイモンの元同級生、ゴード役で出演もしているのだが、あまりに不気味だったためあまり認識されていない。ブルー・タン・フィルムズが製作したこのサスペンス映画のコンセプトは、エドガートンがまだ実家で過ごしていた時代に遡る。
「母親が『白と黒のナイフ』のような心理サスペンスにハマっていたんだ。地元の町のビデオ店から擦り切れそうなビデオテープをたくさん借りてきてね。そこから僕もヒッチコック風の作品にすごく興味を持つようになったんだ」

高い演技力を求められた実話
エドガートンの最新作『ラビング 愛という名前のふたり』は、1950年代のバージニア州で異人種間の結婚をした夫婦が、アメリカでの汚点ともいうべきジム・クロウ法と闘った実話に基づく壮大な物語だ。エドガートンが夫のリチャード・ラビングを、ルース・ネッガが妻ミルドレッドを演じ、そのふたりの演技力にオスカー大本命との呼び声も高かった。
 この作品でも、エドガートンが演じているとは気づかれにくい。黄ばんだ歯や脱色した髪など、彼が演じたリチャードの(アクセントも含めた)身体的特徴が傑出していたためだが、何よりも心理描写の上手さが際立っていた。彼にとって感情移入や一体感という概念は極めて重要なことで、それなしでは役に入り込めないという。
「感情移入というのは、僕が芝居を考えるうえで非常に難解な言葉だ。この作品では特に肝心だった。とにかく役になりきろうと努力し、自分なりのやり方を見つけ、その人の人生と同じような経験を手がかりにしようとした」
 ただ、今回の役に関してはその努力はまったく報われなかった。
「どんな権利の侵害も受けないまま42年間生きてきた、ということに気づいたんだ。幸せなことに、オーストラリアで上位中産階級の家庭に生まれ育ち、素晴らしい両親がいて、教育を受けさせてもらい、テーブルの上には食べ物があった。何かができないとか、何かになれないとか、何かをして生きてはいけないとか、誰からも言われたことがなかった」
 また、リチャード・ラビングは労働者だったため、エドガートンはスクリーン上で、目の前に立ちはだかる制度に対する弱さを表現する必要があった。それを仲間の前で見せるオープンで深い愛情と並行して表現しなければならず、非常に繊細な演技力が求められる。エドガートンは、この役柄のそういった難しさについてよく理解していた。
「リチャード役に取り組むための知性のレベルについて、僕たちは議論を重ねてきた。僕が思うに、リチャードは本能的な知性が高い。彼は正しい情報に基づいて、正しいことを感じることができる人だと思う。例えば、絶対的で正しいものだと信じ込まされていた法律について、自分自身の状況を考えるとどこかおかしいのではないかと感じていた。間違っていることはわかっていながら、それを言葉にする術を知らなかっただけだ。裁判官や弁護士と同席する権利さえもないと思っていた。リチャードのような労働者は、静かに語るという一面がある。『必要なときだけ話す』ということ。それが、多くの人の心に訴えるんだ」
 この作品からは夫妻の憤りの感情が感じられず、当時の状況が正しく伝わらないというクレームもあるという。しかし、内容を考えればこうした意見は的外れで短絡的である。この作品では、自分たちは非力で勝てる見込みがないと感じていた夫婦が直面したある状況を描いている。演技で表現しなければならないのはそこで、現代の人々の期待に沿う必要はない。エドガートンは、こう語っている。
「この作品を観れば、人間の心理というものがよくわかるだろう。みんなが緊迫し、ひどく感情的になってしまったら、観客はそうした感情を抱けなくなる」
 彼は自分の仕事に対し、知性と素晴らしい作品を作りたいという思いを持って臨んでいる。世界中が希望を求め、この作品のような物語を通じて前進することを望んでいるのだ。これほど今の時代に合った作品はないし、その責任を果たせる俳優はジョエル・エドガートンをおいて他にいないだろう。

公開中の最新作『ラビング愛という名前のふたり』。ルース・ネッガと、実在した異人種の夫婦を好演。

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THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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