Monday, June 24th, 2019

ADVANCE AUSTRALIAN FLAIR
オーストラリアからやってきた才能

映画という奥深い世界を知る
 エドガートンにとって、学校生活だけでなく家庭での生活も映画への興味を促すのに一役買っていたようだ。彼のテレビ鑑賞の習慣は、1980年代の子供の典型といえるものだった。
「演劇学校へ進学したけれど、文学や演劇についてあまりにも無知だった。アーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンより前の映画なんて知らなかったよ。子供の頃は、とにかくスピルバーグが中心。『インディ・ジョーンズ』や『ジョーズ』、あとは『グーニーズ』や『スター・ウォーズ』も。次が、チャック・ノリスや武術映画。あとは、『コマンドー』、『コブラ』、『ランボー』みたいな筋肉系映画(笑)。そういう映画ばかり観て育ったんだ。70年代以前の名作について知ったのは、演劇学校に入ってからだった。それまでは、エンターテインメントとして観ていたんだ」
 当時の演劇学校は今とは違って、学生にとって名声や富への近道などではなかった。脇役の俳優と同じく、オーディションのために電話をかけ、劇場に出演して、テレビ番組のちょい役を獲得するまでに想像できないほどの時間がかかるものだった。エドガートンの場合も、初めは警察もののドラマシリーズの一話に出演するところからスタートした。しかし、ここから知名度を上げて世間から注目を集め、家賃を払えるまでになることは、エドガートン曰く、「ブロードウェーもウエストエンドもない」国では、とてつもなく難しいことなのだ。
「オーストラリアにはまだまだミクロな映画文化しかない。質が低いという意味ではないけどね」

期待と野心の綱渡り
 彼が目指すところまで到達するためには、自ら奇跡を信じて突き進むしかなかった。待っていても何も始まらない。次のステップへ進もうとする場合、かなり前から舞台の仕事を入れないようにする必要があった。
「アメリカへたどり着くまでの間、次のチャンスを作るために何度も生命線を断ち切った。恐ろしかったよ。せっかく仕事のオファーが来たのに、次の挑戦を探しているという理由で断っていたんだ」
 誰かの俳優人生が終わりを迎えているように見えたとき、新人は成功の予感に浮かれてしまうものだ。エドガートンも例外ではない。その後数年間、彼のキャリアは山あり谷ありだった。
「初めて映画の仕事が決まったとき、『これで前へ進める!』と思った。けど、あっという間にどん底生活に戻ったよ」
『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でのオーウェン・ラーズ役など、脇役を務めたこともあった。『ケリー・ザ・ギャング』ではアーロン・シェリット役でヒース・レジャーと共演。『キング・アーサー』では、長髪スタイルのガウェイン役。『キンキーブーツ』では、キウェテル・イジョフォーとダブル主演を果たした。
 着実にキャリアを重ねていく中でも、彼は自分の道が約束されているとは考えていなかったかもしれないが、だからといってぐずぐずと自己憐憫するようなタイプでもない。「ミクロな映画文化しかない」母国へ戻ると、自身もメンバーを務める映像作家集団、ブルー・タン・フィルムズの一員として短編映画の製作に取り掛かった。そして2005年から2010年までの間、3本の短編と2本の長編映画で、脚本、出演、製作に携わった。『アニマル・キングダム』(2010年)もそのひとつだ。この作品がきっかけとなり、彼はアメリカで注目されるようになった。

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シャツ Budd Shirtmakers
タイ Thom Sweeney
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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