August 2021

A DESIGN FOR LIFE: VITALE BARBERIS CANONICO

世界で最も紳士を生む服地

photography luke carby
text yuko fujita

VBCのショールームのひとつ上の階がA.カラチェニのサルトリア。チャコールグレイとネイビーの服地が壮観に並ぶなか、色彩の豊かなVBCの服地が並ぶコーナーがある。イタリア サルトリア界の頂点のひとつとされているA.カラチェニにこれほどまでに高く評価されているのは、服地メーカーにとってこれ以上ない名誉なことである。

「VBCの服地は経緯双糸でハリとコシがあって手触りが大変よく、とても長持ちします。手縫い工程が多いサルトリアでの仕事にとても適しています。これが既製服向けのデリケートな服地になると縫っているうちによれてしまいます。サルトが扱いやすい服地を、フランチェスコさんは大変よく理解してくれている。そこがVBCの強みです」

 カラチェニで圧倒的人気なのは、モヘア混、フランネル、21マイクロンの4プライウーステッド(通常より太く硬い原毛を使用)の3服地。ちなみにこれら3つはカラチェニに限らず、世界中のテーラーからも評価が高い。VBCの高品質を世界に知らしめた3本柱である。

 古くからのカラチェニの顧客は、昼はチャコールグレイ、夜はネイビーのスーツがお決まりだ。服地棚にはダークカラーの英国服地がぎっしり並んでいるが、VBCの服地が並んだ一角だけは“色”がある。VBCの服地には、質の高さに加えて若い世代を惹きつける華がある。カラチェニの新たな未来を切り拓く、親善大使のような存在なのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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