THE LEADER OF THE PACK: WOOLF BARNATO

ベントレー・ボーイズのリーダー:
ウォールフ・バルナート

December 2019

 

 ウォールフ・バルナートは、大柄な体格だったが、あだ名は“ベイブ”だった。それは彼が三男坊の末っ子であるということと、彼のがっしりとした、182cmもの長身に対する皮肉だった。

 

 ケンブリッジ大学時代は、ボクサーとアスリートとして名前を売った。その後、第一次大戦中に彼は民間人として入隊し、パレスチナで任務につき、最終的には大尉にまで昇進した。兵役が終わると、彼はレーシングカーと“レーシーな女性”へと、その情熱を注いだ。

 

 彼のかつての指揮官が、アーデンランハウスの敷地内に住んでおり、彼のために土地を購入するのを手伝った。バルナ―トは喜んで“土地支配階級”の仲間入りを果たした。彼は約1000エーカーに領地を拡大し、新たにゴルフ・コースを付け加えた。

 

 バルナートのもとでは、アーデンランは建築家が考えていた伝統的な英国のカントリー・ハウスではなかった。代わりに、それは文字通り“プレイボーイ・マンション”となった。

 

 バルナートは、家の地下にチューダー朝風のパブを作った。ダイヤモンド型に切り取られたエリザベス朝風の小さな窓枠の後ろには電灯が取り付けられ、まるで陽の光が差し込んでいるような印象を与えていた。大きなオーク材の暖炉にはピューター製のジョッキが飾られていた。

 

 昼夜を問わずそこを訪れた者は、ベーコンと卵を食するハンターや、ほろ酔い加減のフレッド・アステア、スコットランドの俳優ジャック・ブキャナンなどショービジネス界の人々、または単にどんちゃん騒ぎをするだけ連中のいずれかに遭遇した。

 

 

 その時までに、バルナートはウォール街の投資家の娘と離婚し、独身人生を謳歌していた。 女の子たちの母親は、娘を彼に近づかせまいとした。また実際、品行方正な女の子なら、夜の外出後に、バルナートに家まで送らせることは避けるべきだった。彼の夜用リムジンには、ドライバーのための単一の座席コンパートメントがあったが、残りの車内は完全なプライバシーを確​​保するカーテンを備えた、大きなL字型の私室に改造されていた。

 

 この華やかでラグジュアリーな高級車の後ろで、彼が楽しませた女性の代表格は、ミュージカル・スターのジューン・トリップで、そのヒット曲には、まさにこのクルマに相応しい“レディース・アー・ランニング・ワイルド”が含まれていた。

 

 

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