Bentley Bentayga EWB Azure in Vancouver

ベントレー ベンテイガ EWB アズール
どこにいても、究極に快適

September 2022

text KENTARO MATSUO

 

 

 

 

 カナダ西岸ブリティッシュ・コロンビア州に属するバンクーバーは、活気あふれる港湾都市だ。街にはガラス張りの高層ビルが立ち並び、港には北米有数のドックが備わっている。豪華客船が横付けされた埠頭の先では、フロートのついた水上機が離発着を繰り返している。都市圏には250万人の人が暮らし、その多くが移民である。英語を母国語とする人は、全体の50%しかいない。さまざまな人々がバンクーバーという街に惹かれてやってくるのだ(かつてタレントの大橋巨泉氏もバンクーバーに住んでいた)。

 

 

 

 

 その魅力のひとつは、大自然に簡単にアプローチできることだろう。都市中心部からクルマで1時間も走れば、ロッキー山脈の麓に達し、手つかずの自然を満喫できる。グリズリー・ベアを頂点とする野生動物に遭遇する機会も多いという。

 

 ラグジュアリーな内外装と、高い走破性を併せ持つベントレー ベンテイガEWBアズールを試乗するステージとして、これ以上の場所はないだろう。

 

 

 

 

 テストドライブは、街一番の高級ホテルであるフェアモント パシフィック リムからスタートした。都会的なエントランスに、ベンテイガEWBアズールの流麗なエクステリアがよく似合う。全長5,305mm、全高1,739mmの大柄なボディと、22インチの大径ホイールが抜群の存在感を放っている。ノーマルのベンテイガに比べてホイールベースが180mm伸長され、それはそのままリアシートのスペース拡大に当てられたという。

 

 

 

 

 後席へ乗り込んでみると、まさに広大といえる空間が広がっている。身長180cmの筆者でも悠々と足を組むことができ、頭上も高く抜けている。助手席を倒し、フットレストに足を乗せれば、クルマの後部座席というより、飛行機のファーストクラスでリラックスしているようだ。パッセンジャーは中央に配されたモニターでさまざまな機能を集中コントロールすることができる(ドアもボタンひとつで自動開閉する)。

 

 

 

 

 もっちりとした質感を持つ高級レザーが多用されたインテリアはモダンなデザインだが、手仕事で施されたステッチなどにベントレーが誇る匠の技を見ることができる。このシートには、世界初の機能として「オートクライメートシステム」と「姿勢調整システム」が採用されている。前者はシート内のセンサーが温度と湿度を測定し、シート表面を自動的に冷却したり温めたりする機能だ。後者はシートクッションを定期的に微調整して血液の循環を促進し筋肉を弛緩させ、長距離移動の疲れを軽減するシステムである。

 

 ベンテイガEWBアズールは、乗る人に究極の快適さを体験させる「ウエルビーイング」をテーマとしている。

 

 

 

 

 バンクーバーといえば、2010年に開催された冬季オリンピックを思い出す人も多いだろう。フィギュアスケートの浅田真央選手が銀メダルを獲得した大会である。最初の目的地は、その競技会場であったウィスラーのオリンピック・パークである。

 

 ドライバーズシートに座り、ハンドルを握る。長いボディにもかかわらず、街中の取り回しはとてもいい。これはAWD(全輪操舵)が備わっているからで、狭いコーナーでは前輪と後輪が反対向きとなり、回転半径を小さくしてくれるのだ。

 

 バンクーバーは「ガーデンシティ」と呼ばれ、街中にも木々が多いが、都市部を抜けるとあたり一帯が緑に包まれる。試乗当日は快晴で、パノラマルーフから爽やかな陽光が降ってくる。鬱蒼と茂る森や煌めく河川などが、次々と目に入ってくる。

 

 

 

 

 高速道路におけるベンテイガEWBアズールは、さながらプライベートジェットのようである。4LV8エンジンは550psを発生し、2.5tのボディを軽々と加速させ、路面上を矢のように飛んでいく。素晴らしい安定性と乗り心地の良さで、道路の継ぎ目などないように感じさせる。さまざまな運転支援機能が備わっているが、それらを使わないでも実にコンフォートなドライブが楽しめる。

 

 

 

 

 ウィスラーのオリンピック・パークは、ロッキーの麓に拓かれた1,112ヘクタール(東京ディズニーランド22個分)もの広さを誇る自然公園で、大会中はここでバイアスロン、クロスカントリー、そしてジャンプ競技などが行われた。ウインタースポーツが楽しめる冬季のみのオープンだが、当日はベントレーが丸ごと貸し切っていた。ベンテイガEWBアズールのオフロード性能を、とことん試そうというわけだ。

 

 

 

 

 走行モードをオフロードにすると、ベンテイガはその巨体をものともせず、胸をつくような急勾配や凸凹道を難なくクリアしていく。道の突き当りの狭い転回場所でも、AWDのおかげで切り返しせずに、くるりと向きを変えられる。実際にこのクルマでオフロードを走る人はあまりいないと思うが、その性能は折り紙付きである。シャンツェ(スキージャンプ台)頂上までは難なく到着した。上から見下ろす傾斜32度のラージヒルは、奈落の底へと落ちるようだ。思わず足がすくんでしまう。

 

 

 

 

 次のステージはワインディング・ロードである。目的地までの道は、ロッキーに連なる大小さまざまな山の中を縫うように走っている。しかしさすがは北米カナダだけあって、道幅は広く、コンディションもいい。スポーツカー乗り垂涎のロケーションだが、ベンティガEWBアズールのドライバーにとっても、この状況は僥倖なのだ。

 

 

 

 

 巨体は思った以上に俊敏で、ひらりひらりとコーナーを抜けていく。AWDが効いているのだろう。カーブを曲がる際は、前輪と後輪が同じ向きになって、車体をスムースに導くのだという。ブレーキは実によく効くし、アクセルを踏むと強烈な立ち上がり加速が得られる。しかし、そういう攻めた走りより、このクルマには、ジェントルなドライブが似合う。

 

 特筆すべきは、「疲れない」ことだ。この日は2時間近くワインディングを走ったが、まるで疲労を感じなかった。ハイテクによる細かい「ウエルビーイング」への配慮の賜物に違いない。このクルマの最大の美点は、いつも快適でいられることである。

 

 

 

 

 目的地であるフィヨルド湖、レイク・シートンに到着した。V字型に切り立った崖の間に、湖は満々と水を湛えている。バンクーバーからは250kmの距離で、クルマだと4時間かかるという。さすがに少し辟易していると、嬉しいサプライズが待っていた。クルマはここで乗り捨て、帰路は水上機だというのだ。

 

 

 

 

 湖上を切り裂くように滑水し、ふわりと宙に舞うと、眼下にカナディアン・ロッキーの絶景が広がった。見渡す限り広がる山々の連なりに息を呑む。日本アルプスが数千個続いているような感じだ(ロッキー山脈の長さは日本列島のほぼ倍である)。森林限界を超えた山地や湖は、上空から眺めると雨が降ったあとの砂場のようで、手を伸ばせば届きそうな錯覚に陥る。とにかく、すべてが途方もないスケールだ。

 

 

 

 

 ベントレーのスタッフが、ベンテイガEWBアズールのテスト・ドライビングに、なぜバンクーバーを選んだのか、よく理解できる。ここなら、都会から大自然まで、劇的に変化する環境を一日で体験できるからだ。しかも、このクルマに乗ってさえいれば、どこにあっても、常に気持ちよくいられるのだ。

 

 A点からB点まで移動するのに、最も心地よい移動手段は、現在のところベンテイガEWBアズールである。それはパッセンジャーとしても、ドライバーとしても同じだ。究極のラグジュアリーとは、「ウエルビーイング=人間として快適でいられること」なのである。