I’VE GOT SOLE BUT I’M NOT A SOLDIER

手仕事の最高峰、
ジョージ・クレバリーの夢を叶える

April 2020

text tom chamberlin photography kim lang

世界中からファンが集まる靴好きの聖地。メイフェアのオールドボンド・ストリートとアルベマール・ストリートに挟まれた商店通り、ロイヤル・アーケードに位置する。
George Cleverley & Co. Ltd 
13 The Royal Arcade 28 Old Bond Street London W1S 4SL
Tel: +44 20 7493 0443

靴ファンの聖地へ
 メイフェアのオールドボンド・ストリートとアルベマール・ストリートに挟まれた商店通り、ロイヤル・アーケードにあるG.J.クレバリーは、まるで何世紀も前からそこに建っているかのように見える。イギリス屈指の老舗の例に漏れず、店舗スペースは大きくないが、そこには個性が満ちあふれている。小さなショールームには多彩なスタイルの靴がずらりと並んでおり、店の一角にあるらせん階段は、階上または階下にある工房、倉庫室、ラストルーム(ラストと呼ばれる靴用木型の収納室)へ通じている。

 ここの魅力のひとつは控えめさだ。ラストルームをざっと見ただけで、クレバリーがラルフ・ローレン、トム・ハンクス、グレイドン・カーター、ノエル・カワードといった大物たちの靴を仕立ててきたことに気づかされる。同社にはここを“観光スポット”にする意図はないのだが、同社の靴が世界中で人気を博しているために、ここへ来ることはちょっとした聖地巡礼のようになっている。

 ビスポーク靴を誂える過程は複雑かつ厳密で、率直にいって時間がかかる。スーツの仕立てには3カ月ほどかかるものだが、ビスポーク靴の場合、初回は1年かかる可能性もある(ブランドによっては18カ月~2年を要するという)。クレバリーの名誉のために申し上げると、主な理由は、同社に数多くのビスポーク靴の注文が入っていることだ。とは言っても、私は特にせっかちというわけではないので、できあがるまでの期間はワクワクする楽しいものであった。

 クレバリーでラストを作る職人は、靴作りの世界では伝説的な人物だ。ジョン・カネーラ氏は半世紀にわたって靴を作り続けてきた。40年以上前に私の父のラストを手がけた方でもある。息子のダリオ氏も、父の職人としての才能を受け継いでおり、すぐ近くのハンツマンでヘッドカッターを務めている。


クレバリーの伝説的なラスト職人、ジョン・カネーラ氏がトム・チェンバレンの足を採寸する。足の輪郭を紙の上に写し取った後、ボールジョイントの幅など、いくつかのポイントを慎重に採寸していく。
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