I’VE GOT SOLE BUT I’M NOT A SOLDIER

手仕事の最高峰、
ジョージ・クレバリーの夢を叶える

April 2020

text tom chamberlin photography kim lang

靴の縫製後に行われるソールの製作。傾斜をつけ、滑らかにならしたヒールは、靴の革に合わせてブラックに塗られている。

革が靴になっていく
 ラストが完成し、デザインについて意見がまとまると、靴作りの工程がスタートする。型紙が切り出され、次は革のクリッキングだ(使用した革は標準的なブラックのカーフレザー。クリッキングとは裁断のことで、裁断用ナイフから出るクリック音にちなんでこう呼ばれる)。

 続いて、革をラストの回りに留めて成形するブロッキングという工程に移る。ここで重要になってくるのが、一枚革を使用する場合、革がどれほど伸びるかという点である。1枚の革を平らに広げると、左右の前脚部分の間に皮膚の伸びによるシワが生じることが見て取れる。できるだけ自然な弾力性を生み出すには、革を“タイト・トゥ・トゥ(つま先方向に向かってタイト)”に裁断する必要がある。つまり、伸びによる線が現れないように裁断するのだ。朝、靴の中に冷えた足を滑り込ませたときよりも、日中は足のサイズが大きくなるが、このように裁断しておけば、靴の前部が必要な弾力性を備えているため、型崩れを防ぎつつも快適性を保つことができる。ストラップと釣り合う形状を維持することも重要だ。

 次はライニングを入れる工程である。伝統的なオックスフォード・シューズやブローグ・シューズの場合は、ふたつの別々のライニング(側面のクォーターライニングと前部のヴァンプライニング)を入れることが多いが、今回の靴は1枚の革のみで構成されたスラリとしたデザインなので、ライニングも同様になった。

 ライニングの厚みは顧客によって異なる。顧客の体の大きさや靴に用いるソールの種類を考慮しなくてはならないからだ。例えば、きめの細かいキッド革のアッパーとダブルレザーソールは調和しない。今回の靴はドレッシーでかなり上品なソールを備えているため、ライニングは1.2㎜。アッパーよりしっかりしたライニングは、アッパーに過剰に反発するため避けた方がよい。


職人が使う道具は、それぞれモデファイが施してある。

美しいシェイプを描くトゥ部分。エッジを着色しているところ。
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