TIME AND TIDE

進化する傑作、サブマリーナー

March 2021

text ross povey

1984ホワイトゴールドで縁取られたアワーマーカー、光沢のブラックダイヤルを採用したRef.16800。

2010初めてセラクロムベゼルを採用して話題となったオイスタースチール製デイトモデル、Ref.116610。

202040mmから41mmへとサイズアップし、新キャリバー3230を搭載した最新のノンデイトモデル。

1980年代後半から現在 コレクターがロレックスの歴史をひもとく上でよく使うのが「移行期」という言葉だ。サブマリーナー デイトでそれを完璧に体現するモデルがRef.168000である。これは1988年のほんの数カ月間だけ製造されたものだが、光沢があるダイヤルの16800との違いを見分けるのは不可能である。違いは使用されたスチールだけだからだ。168000では従来の316Lスチールに代わり904Lスチールを使用している。

 その後1989年に発表されたRef.16610も168000とほぼ変わらなかったが、ムーブメントだけは16800から使用されていたキャリバー3035からキャリバー3135に変更された。

 16610の生産は21年間続き、2003年には50周年記念モデルの16610LVが登場した。LVは通常の16610に比べ大きなアワーマーカーを備えたマキシダイヤルが採用されている。グリーンのベゼルから、コレクターの間では「カーミット」の愛称で知られる。カーミットがヴィンテージ市場でホットなモデルとなっていることを考えれば、セラクロムベゼルが特徴的な2010年のサブマリーナー デイトRef.116610にグリーンダイヤル&グリーンベゼルのバージョンが展開されたのは当然の流れといえる。こちらは「ハルク」という愛称が付いている。

 ノンデイトのサブマリーナーは、時計の変更点から考えると遅咲きのモデルだといえる。5513の後継、Ref.14060は1989年に発表された。ルックスやスチールのベゼルリングとアルミのインサートといった特徴は受け継がれたが、傷が付きやすいアクリルガラスからフラットなサファイアガラスに変更となるなど、プロフェッショナルウォッチの新時代にふさわしいパッケージングとなった。ベゼルはクリックスプリングを備えた逆回転防止ベゼルとなり、旧式のスプリングワッシャーのシステムに比べ技術的に改善された。

 また、新たにキャリバー3000シリーズの搭載が始まったことでも知られる。これは、ロレックスが研究開発を重ねて実現した革新技術を活用したムーブメントだ。2001年にはこのムーブメントをアップデートし、それを示すためにリファレンスナンバーである14060の最後に「M」の文字を付けたモデルを発表した。キャリバー3130はクロノメーター認定で、ダイヤルに「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」の文字が追加され、1970年代前半の5512以来となる4行表記になった。

1926年にロレックスが開発した「オイスターケース」。ベゼルと裏蓋、リュウズをねじ込み式にすることにより、牡蠣(オイスター)の殻のように気密性を保ち、ムーブメントを完璧に保護する。世界初の腕時計用の防水ケースとして特許取得した、革命的なシステム。

本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 38

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