Wednesday, February 7th, 2018

THE ROARING TWENTIES

ベントレー・ボーイズの伝説

text andrew hildreth

1930 年のル・マンで先頭を走るバーナート。

センス抜群なバーキン サー・ヘンリー・“ティム”・バーキンは、内気でふさぎ込みやすい性格だったが、スレンダーな体形と抜群のファッションセンスを持っていた。サヴィル・ロウの常連で、ツイードジャケットにグレイのフランネルパンツを好んで穿いていた。レース時には、ダークブルーのスポーツシャツにホワイトのレーシングスーツを着て、その上からベルトを締め、ブルーにホワイトのドットが施された、シルク製のスカーフ(彼のトレードマーク)を巻いていた。

 バーナートのアプローチが慎重だったのに対して、バーキンはクルマに乗ると性格が変わるスピード狂で、自らの限界を試そうとするタイプだった。彼の自叙伝のタイトル『フルスロットル』からも、彼のレース戦略に対する哲学は、十分に伝わるだろう。

豪快なパーティー 1920年代後半に、ロンドンのタクシー運転手に「ベントレー・コーナー」で降ろしてほしいと頼めば、グロヴナースクエア50番地が目的地だと通じたはずである。そこはバーナート、バーキン、ルービン、キッドソンをはじめとするベントレー・ボーイズが住んでいた場所だった。数えきれないパーティーが催され、社交界の有名人や女優が出入りしていた。まだ駐車違反や飲酒運転を禁じる法律がなく、泥酔に近い状態で運転しても許された時代のことである。

 シャンパンは、レースの前後、さらにはレース中まで、ベントレー・ボーイズの人生のあらゆる局面において重要な役割を果たすものだった。ドライバーたちはレース中に疲れを感じると、シャンパンと水を絶妙にミックスさせたものを飲んで生き返った。少々度が過ぎて、酩酊状態だったために、メカニックに乗車を拒否されるドライバーもいた。ピットはシャンパン、ワイン、ローストチキン、お抱え運転手、執事たちで溢れかえり、彼らの快楽主義的なライフスタイルの延長のようだった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 20
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