April 2018

100 YEARS : THE SONG WE'LL ONLY HEAR IF WE CARE

ファレル・ウィリアムスの新曲、
100年後にリリース

ファレル・ウィリアムスの新曲とあれば、世界中の誰もが聴いてみたいと思うだろう。
彼が今回書き下ろした曲は、最高級コニャック「ルイ13世」と手を組んで誕生したもの。
聴けるのはなんと100年後になるという。しかも、とある条件を満たした場合に限って。

Pharrell Williams / ファレル・ウィリアムス1973年アメリカ・バージニア州生まれ。90年代よりザ・ネプチューンズのメンバーとして音楽プロデュースに携わり、2002年にN.E.R.Dのメンバーとしてデビュー。2013年のソロシングル『HAPPY』と翌年のセカンドソロアルバムが全世界で大ヒット。独創的なファッションにも注目が集まる。昨年末にはN.E.R.Dの7年ぶりのニュー・アルバムも発売。

 2017年11月、新曲は上海での限定公開イベントで初めて披露された。レコードに針が落ちたのは一度きり。今世紀にこの曲が聴かれるのは最初で最後となった。そのアーティストこそ、今や全世界を虜にする男、ファレル・ウィリアムスだ。「飛ぶ鳥を落とす勢い」とはまさに彼のためにある言葉といっても過言ではない。新曲が通常の手順を踏んでリリースされれば、ラジオでパワープレイされ、ヒットチャートを駆け上がり、ミュージックビデオはYouTubeで何億回と再生されるだろう。レコード会社が莫大な収益を得るのは間違いない。

 しかし彼が今回、フランスの最高級コニャック「ルイ13世」と手を組んで書き下ろしたこの曲は、100年後の2117年まで聴くことができない。レコードは金庫に保管され、「ルイ13世」とともに100年間の“熟成の時間”を過ごすのだ。そう、これは「ルイ13世」の「100YEARS」プロジェクトの第2弾である。2015年に発表された第1弾は、ハリウッドスターで映画監督であるジョン・マルコヴィッチが100年後まで公開されない映画を制作したことで話題となった。その第2弾は、100年後まで聴くことのできない音楽、というわけだ。

100年後まで日の目を見ない芸術「ルイ13世」は、コニャックという領域を超えた、ある種芸術作品とも呼べるものである。約1200種類もの“オー・ド・ヴィー(原酒)”を、数世代のセラーマスターが複雑にブレンドを重ね、100年という長い時間をかけて完成させる。彼らはもちろん、完成した「作品」を手にすることはできない。「自然」の豊かな実りと、100年という「時間」によって生み出される味わいは、単純な言葉で表現されるようなものではなく、体験しなければわからないものなのだ。

 この美学に共鳴して発表されたのが「100YEARS」プロジェクトだが、ファレルが「ルイ13世」と手を組んだのには、ある重要なメッセージを世界に発信するというもうひとつの目的があった。その秘密は、『100 Years:The Song We’ll Only Hear If We Care』という曲名に隠されている。ファレルは次のように語る。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 20
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