THE MAGNIFICENT SEVEN

イーサン・ホーク:アーティストとして辿り着く場所

September 2020

text shiho atsumi

「年を重ねてよかったのは、より特徴のある役を演じる機会を得たこと。そして自分の演技をそれまでと違う次元へ持っていくことができたことだ。グッドナイト・ロビショーが演じるに値する役だったことは明らかだよ。南北戦争の知識があれば、戦争から戻った兵隊たちが人間として壊れてしまっていることを知ってるだろう。経験したことにより破壊されてしまった彼の内面を演じることは面白いと思ったし、アントワーンと僕はそこが気に入った。彼は僕に『ディア・ハンター』でクリストファー・ウォーケンが演じた役を求めていたんだ」

 “初恋の相手”と呼ぶインディーズ映画、そして人々がスリルを求めるために見る娯楽映画。「スターになりたいと思ったことは一度もない」と語るホークは、その両者を軽やかに行き来しながら積み上げたキャリアを愛し、今後もアーティストとしての自由を手放すことはない。

「時に馬に乗り、人の命を救ったり美女と恋に落ちたりする“フリ”をする、それが僕の仕事の日常だ。不満はないよ。マヌケなヤツとの仕事も永遠に続きはしない、撮影が終わってしまえば、その顔をしばらくは見なくてすむ。これで食っていけるなんて本当に贅沢なことだ。“普通の”――僕の親がしているような――仕事なら、職場から歩き去って新しい人々と働いたり、自分で立ち上げた新しいプロジェクトとともに新たな自分になることもできない。自分が好きなことで生計を立てられることを、ただただ幸せに思うね。もし僕の人生がグラフィックノベルだったら、その表紙は何になるかって? どうだろう。自身の最高の役としてリア王を演じる97歳――そんな自分を望んでる。グレイヘアを長く伸ばし、顔なんか皺だらけになって……って、まだそんな話はやめてくれって(笑)」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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