September 2020

THE MAGNIFICENT SEVEN

イーサン・ホーク:アーティストとして辿り着く場所

text shiho atsumi

「4つのオスカー・ノミネーションで測る彼の30年のキャリアは、脚本家、監督、小説家、舞台と映画の俳優と多面的で、挑戦し続けるアーティストとしての評価を確固たるものにしている」とは、サン・セバスティアン映画祭の授賞声明だ。その生まれは1970年、テキサス州のオースティン。大きな注目を浴びた『いまを生きる』(1989年)への出演を機にニューヨークへ移住し、以降、狂騒のハリウッドとは一定の距離を保ち続けているイーサン・ホーク。ある世代のすべての人間の心に突き刺さったであろう名作『ガタカ』(1997年)の主演や、彼を語るに欠かせない監督リチャード・リンクレイターとの関係において、ほかの俳優とは一線を画すアーティストとしての存在感がある。ことにリンクレイターと共演者ジュリー・デルピーと3人で作り上げた『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995年)は、同じカップルのその後の27年間を追った3部作に発展し、脚本家としてのホークに多くの映画賞をもたらした。1996年には、初の小説『痛いほどきみが好きなのに』も上梓している。そんな脂の乗り切った90年代後半を経て、彼に初のオスカーノミネートをもたらした作品『トレーニング デイ』に出合ったのは2001年。その監督アントワーン・フークアと主俳優デンゼル・ワシントンの存在は、彼が『マグニフィセント・セブン』に参加したもうひとつの理由だ。

「『トレーニング デイ』は僕にとってある種の到達点だと思うし、すごく好きな作品だ。『荒野の七人』のリメイクに参加できることは、少年時代の夢の実現みたいなものだけれど、その上、アントワーンとデンゼルと一緒にできるなんて……。僕の出演交渉はかなり強引だったと思う。アントワーンを脅したのさ。もし僕をキャストしないなら、友達の縁を切る、ってね(笑)」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
1 2 3 4 5

Contents