THE MAGNIFICENT SEVEN

イーサン・ホーク:アーティストとして辿り着く場所

September 2020

text shiho atsumi

 オリジナルの『荒野の七人』は、名匠ジョン・スタージェスが監督し、主演はユル・ブリンナーとスティーブ・マックイーンという映画史に残る名作だ。そしてそのさらなるオリジナルを辿れば、黒澤明の『七人の侍』に至る。そうした多くの伝説を持つ作品のリメイクは、たいていの監督にとって「恐怖に腰が引ける仕事」だとホークは語る。それを乗り切ったのはアントワーン・フークアの豪胆さと、西部劇への愛――そして現場での出演陣の努力のたまものだろう。

「ルイジアナでの撮影は、この10年で僕が参加した映画の中で、最も長い期間を要した。延々と撮り続けていたよ。そんなわけで僕はその夏じゅう乗馬を楽しんだんだけど、もちろんそんなことばかりじゃない。気温が40℃を超えて雨続きのときなんて悲惨だった。みんながウールを着て怖がる馬に乗り、モノを爆発で吹っ飛ばしていた。しり込みしたらケガをしかねないのに、暑さと雨のコンビネーションで、撮影はさらに難しくなった。シンプルなシーンなどひとつもない、すべてが多くのエキストラを使った場面だったし、とにかくすごく大変だったよ。映像を見たときは本当に嬉しかった。うまくいったか確信を持てないシーンもあったからね」

 そんな中で彼が演じた役、グッドナイト・ロビショーは、南北戦争で活躍した凄腕のスナイパーだ。デンゼル・ワシントン演じるリーダーの古い友人であるこの役は、その複雑さで物語に深みを与えている。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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