手仕事モノ図鑑04
FERRUCCIO SERAFINI
バッグ
May 2020
ほんのわずかなディテールにも結晶のごとく集約されている。
そんな手仕事名品たちの“見どころ”を解説しよう。
真のクラシックが宿る
“ローマのじっちゃん”の温もり
今年で87歳のフェッルッチオ・セラフィーニ氏。馬具職人だった父の工房に連れられて入ったのがキャリアのスタートだ。2009年にはローマ市長にその技が認められ、表彰もされている。
Craftsmanship Point現在においてはほとんど見ることができない、昔ながらのイタリアン・クラシック鞄を作り続けているのがセラフィーニ最大の魅力。山っ気を出してモダナイズをしないところが逆に新しい。ひとつひとつ革を手裁ちし、丹精込めて作られる鞄は、移り気な巷のトレンドとは一線を画した佇まい。ビスポークスーツと最高の相性だ。
ローマの鞄&革小物職人、フェッルッチオ・セラフィーニ氏がその道に入ったのは1942年、9歳のとき。以来78年にもわたって鞄作り一筋で歩んできたわけだから、本物のレジェンドだ。現在工房に勤めるのはわずか2名。セラフィーニ氏本人と娘婿のルイージ・スカンダーレ氏である。
そんな小さな工房で生まれるのは、何十年前から変わらない手作りの革鞄たちだ。新世代のクラシックファンたちが伝統のクラフツマンシップを求めて熱狂する今の時勢など、きっと気にも留めていないのだろう。今どきのニーズに合わせて機能を加えたり、デザインを改変することもほとんどしていない。素朴なベジタブルタンニンなめしの革は、少し使えば引っ掻き傷だらけになってしまう。
が、そこが素晴らしい。時代におもねらず、古き良き真のクラシック鞄をごく当たり前に継承しているところにこそ、フェッルッチオ セラフィーニの真価があるのだ。丁寧に施されたステッチひと針にも温もりが宿る。“ローマのじっちゃん”のお手製鞄は、見るほど、使うほどに愛おしさが深まる逸品だ。
日本で購入できるのは、クラシックなレザーリュックとシンプルなクラッチバッグ。いずれも素朴な雰囲気が魅力だ。リュック(H41×W32×D15㎝)¥81,000、クラッチバッグ(H26×W37×D5㎝)¥45,000 both by Ferruccio Serafini / Afterhours
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33