THE APPLIANCE OF SCIENCE

サステナブルなスーツとは?

March 2020

text ryan thompson photography kim lang & rian davidson
issue10

ギーブス&ホークスのメイド・トゥ・メジャーのスペシャリスト、アンディ・ブラウン氏とのオーダー作業。新しくデザインされたゲージ・サンプルを使用してイメージを形作っていく。

 私はあの日、VBCの素晴らしさを噛み締めつつ、長さ3メートルのネイビーの見事なフレスコ地を小脇に抱えて工場を後にした。

生地を抱えてサヴィル・ロウへ 私はこの生地を、できるだけサステナブルな方法で利用したかった。そこで向かったのが、ギーブス&ホークスの本拠地であるロンドンのサヴィル・ロウ1番地だ。私が生まれて初めて買ったスーツはギーブス&ホークスだった。既製品にしては十分に体に合った。薄いグレイ、シングルブレステッド、ノッチドラペルというスタイルで、生地はヘリンボーン織りの一種だった。

 私はそのスーツを非常に気に入っていたし、16年が経ち、トラウザーズが入らなくなった今でも愛用している。ジャケットの方は、夏用のセパレートとして今もしょっちゅう身に着けている。流行に左右されないスタイルで、長い寿命を持つこのスーツこそ、サステナブルな服のあるべき姿だ。ビスポークでないのが唯一の弱点かもしれないが、私にその選択肢はなかった。

 そんな私がギーブスに興味を引かれる出来事があった。新しく進化したメイド・トゥ・メジャー・サービスのことを耳にしたのだ。まさに“買い物は量を控えめに、質を高めに”というスローガンを絵に描いたような方式だ。

「ハウススタイルへの忠実さを保ちながらも、より現代的でフィット性を強調したブロックになっています。バランスの取れたラペル、シャープなショルダー、ウエストの優雅なシルエット、わずかに長めのジャケット丈など、ギーブス&ホークスのメイド・トゥ・メジャーは、現代のサヴィル・ロウ・スーツに求められるあらゆる要素をご提供します」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 32
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