THE APPLIANCE OF SCIENCE
サステナブルなスーツとは?
March 2020
ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)は違っていた。VBCは1663年から服地を生産しており、フランチェスコ氏はバルベリス家が同社を経営し始めてから13代目に当たる。サステナビリティについてはどうだろう?
最も印象に残ったのは工場周辺のエリアだ。布工場といえば、昔から途方もない量の水を浪費するものだ。服地はいくつもの洗浄工程を経て、ようやく完成するからだ。おまけに染色工程もある。使用される数々の化学物質(銅、クロム、硫酸など)は生き物に害を及ぼす。
しかし、VBCは循環式の浄水システムを稼働させているため、工程が完了すると、水は浄化されてシステムに戻されるか、自然に返される。私は工場の敷地内で、ブクブクと泡立つろ過タンクをこの目で見た。だからこそ証言できるのだが、ろ過された浄化水の一部は小さな湖に流れ込んでおり、そこでは鯉や金魚らしき魚が実に幸せそうに泳いでいるのだ!
私はあの日、VBCの素晴らしさを噛み締めつつ、長さ3メートルのネイビーの見事なフレスコ地を小脇に抱えて工場を後にした。
生地を抱えてサヴィル・ロウへ 私はこの生地を、できるだけサステナブルな方法で利用したかった。そこで向かったのが、ギーブス&ホークスの本拠地であるロンドンのサヴィル・ロウ1番地だ。私が生まれて初めて買ったスーツはギーブス&ホークスだった。既製品にしては十分に体に合った。薄いグレイ、シングルブレステッド、ノッチドラペルというスタイルで、生地はヘリンボーン織りの一種だった。