Monday, July 5th, 2021

STRANGE MAGIC

ベネディクト・カンバーバッチ
芝居の魔術師

人々の記憶に残る“実力派”演技で有名な英国俳優、また献身的な慈善活動家としても知られるベネディクト・カンバーバッチが、2018年1月にジュネーブで開催された国際高級時計見本市「SIHH」に、ジャガー・ルクルトの新アンバサダーとして招待された。
彼が時計作りに興味を深める理由は、緻密な役作りで知られる彼の仕事への姿勢と公私にわたる考え方によるものだった。
text tom chamberlin
photography steve schoeld
styling joe woolfe

Benedict Cumberbatch / ベネディクト・カンバーバッチ1976年イギリス出身。役者の両親の間に生まれ、名門パブリック・スクール在学時に演劇を学ぶ。その後、古典舞台でキャリアを積み、2002年に俳優デビュー。2010年、BBC『SHERLOCK』でシャーロック・ホームズ役を演じてブレイク。以降も話題作に出演し、2014年の『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でオスカー初ノミネート。2016年の『ドクター・ストレンジ』でタイトルロールを演じ、以降も同役でマーベル作品に出演中。

イヴニングスーツ 参考商品 Dunhill シャツ Emma Willis ボウタイ、カフリンクス、スタッドボタン、チーフ all by Labassa Woolfe 時計「マスター・ウルトラスリム・ムーン」¥2,574,000 Jaeger-LeCoultre

「イギリスのテレビで彼を見かけて、必死になって探したよ」

 発言の主はスティーヴン・スピルバーグ。第一次世界大戦を題材にした大作『戦火の馬』(2011年)のキャスティングについて語ったときのコメントだ。当時ベネディクト・カンバーバッチは、既に舞台、テレビ、ラジオ、映画など幅広く活躍し、その地位を確立していた。エディ・レッドメインやトム・ヒドルストンをはじめとする実力派の若手の中でも、カンバーバッチはいつもどこか未知の部分があり、それが彼の魅力だった。豊かな才能と変幻自在のルックスはもとより、甘美なバリトンボイスも持ち合わせている。しかも以前から慈善活動に関心が深い。だから、彼がスイスの高級時計ブランド、ジャガー・ルクルトのアンバサダーに就任したことを知ったとき、何が彼の心を動かしたのかぜひ尋ねてみたいと考えた。

演技力で勝負してきた役者 カンバーバッチはBBC製作のドラマ『SHERLOCK』シリーズで主人公シャーロック・ホームズ役を演じて一躍スターとなったが、それ以前も決して無名の俳優ではなかった。ジェームズ・マカヴォイやトム・ハーディなど、新鋭俳優の相手役としてさまざまなキャラクターを演じる一方、オールド・ヴィック・シアターやアルメイダ劇場、ロイヤル・コート劇場などで数々の舞台に出演していた。彼のキャリアは実に順調で、仕事が途切れることなく充実していたのだ。

「昔から野心があったと思う。大作でいい仕事をしている俳優をよく追っていたんだ。ジェームズ・マカヴォイのキャリアからはたくさんのことを学んだよ。彼はとても頭がよくて、賢明な選択をしてきたし、エージェントにも恵まれている。テレビドラマでの見事な演技を足がかりに主役を獲得するようになっていったんだ。でも僕は彼のような二枚目にはなれなかったし、道のりは長いと感じていた。それに両親とも役者だったから、イアン・マッケランやパトリック・スチュワートといった世代の人々が舞台での輝かしいキャリアをいかに築いてきたかも見てきたんだ。だから、国内各地の舞台に出演しながら、古典作品を演じ、ゆっくりと経験を積んでいきたいと夢見ていた。その夢はある程度叶ったけれど、思っていたよりもスピーディだった。僕は自分のキャリアを誰とも交換したくないな。心から楽しんでいるから」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 24
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