SHOULDER TO SHOULDER

従兄弟で生むエレガンス
変わり行く老舗“チフォネリ”

March 2021

text nick scott

ヴェネツィア訪問中のアルトゥーロ。

 ウェブサイト“Permanent Style”で知られるメンズウェア評論家、サイモン・クロンプトン氏も、ロレンツォ、マッシモ両氏の類まれな才能を認めている。

「スーツ作りの全段階で、彼らは最大限の仕事をし、物理的に可能な最高の結果を出すのです。彼らはミラノ式ボタンホールのような目に見えるディテールで有名ですが、裏地をすべて手作業で付け、生地を折り重ねてさらに手作業でトップステッチをかけるなど、スーツの内側に隠れた仕事も見事です。仕事の最初の段階は完全に隠されていますが、その存在を知れば誰もが驚くでしょう」

 ハウスが密かに実践しているもうひとつのテクニックは、マッシモ氏がかつてTHE RAKEに語ってくれた。「胸、上着の前身頃、後ろ身頃、および肩を、ジャケットの襟とバックネックでしっかり固定する」という原理である。

 現経営者の祖父にあたるアルトゥーロによる研究のおかげで、チフォネリの上着は機能と美しさを両立させている。胸元はすっきりとしており、体に沿ったシルエットにもかかわらず、アームホールの位置が高いことも手伝って、一切の窮屈さを感じない。その着心地は、アンダーソン&シェパードの名匠、フレデリック・ショルティの柔らかなドレープスタイルにも通じる。

生地にカッティング用の印を付けるロレンツォ氏。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38
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