OTÜVAC

RAKISH MANは、
使い込むほどに味の出る鞄を知っている

March 2020

耳慣れないOTÜVAC(オトゥーヴァック)というブランド名は、聞けば「なるほど!」と納得の理由。
凜とした佇まいでありながら有機的で優しい表情をしたその鞄は、長く使い込むほどに味わいを増していく。
text&photography yuko fujita
issue10

シンプルだが革に厚みがあるため、外側と内側のズレを最後のラインできれいに合わせられるかなど、技術的に難しい鞄。シンプルな鞄はごまかしがきかないが、この佇まいを見れば、その凄さがおわかりいただけよう。ヌメ革の2ハンドルトート。オーダーのみで納期は約3カ月。¥250,000(オーダー価格)Otüvac(オトゥーヴァック otuvacavuto@gmail.com

 またひとり、ファンタスティックな鞄職人が現れた。フィレンツェで長らく修業を積んだ甲 祥子さんだ。工房は石川県の七尾市にある、と聞けば、鋭い読者の方はピーンときたはずだ。彼女のご主人は、サルトリア カヴートの甲 祐輔氏。CAVUTOを逆から読んで、ブランド名はOTÜVAC(オトゥーヴァック)。

 フィレンツェの美しい街は、日本人の潜在的な才能を見事に引き出してくれる。美しい街に育まれる感性と日本で育まれた感性が化学反応を起こし、新鮮な美を備えた作品が生まれるのだ。

 甲さんは女性鞄職人ゆえ、その傾向が一段と顕著に表れている。シンプルさを追求したデザインが、彼女の鞄の有機的で優しく滑らかな曲線美を際立たせる。

 革はヌメ革とブライドルレザーのみにこだわりながら、デザイン、パターン、縫製に至るまで、すべてひとりで手がけている。使っていくうちにダメになってしまう鞄ではなく、味わいと魅力を増していくのも頼もしい。そうなったとき、彼女の鞄のタフさ、さらなる美しさに改めて気づかされるだろう。

本記事は2019年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 31

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

RAKISH MANは、トレンドから距離をおいた 自分のスタイルをもっている

RAKISH MANは、 すべてに自分の決まった職人がいる

RAKISH MANは、 職人の仕事を美しい色彩で楽しむ

RAKISH MANは、玄人好みの生地を知っている

RAKISH MANは、 シガーを嗜む隠れ家を持っている

RAKISH MANは、 自宅にアートピースを飾っている

RAKISH MANは、 ヴィンテージのリングを持っている

RAKISH MANは、 クラシック・カーを愛する