LOWER CASE, HIGHER PURPOSE

ユーモア溢れるサステナビリティ
エルメスの“プティ アッシュ”

September 2020

text christian barker

プティ アッシュの作品で使用される材料は、“ジップドッグ”(右)の彫刻を作製するために使用された余った留め具などの日常的なものから、ぬいぐるみのブタ(左)で使用されるミンクやワニなどの、本質的に価値のあるものまでさまざまだ。

「実はサステナビリティはエルメスのルーツだと思います。ブランド設立当初から、エルメスは修理可能で、世代を超えて使用できる製品を作り続けてきました。それはエルメスが送り出す製品にとって、とても重要なことです。修理できること、それはエルメスの製品仕様として、不可欠なことなのです。そこには人々に見てもらいたい美しさがあります。今日私たちが世界で抱えている本当の問題は、一度しか使われずに捨てられるものが、たくさん作られていることです」

 無駄をせず、環境に配慮することは、環境主義が叫ばれるよりずっと前から、メゾンにとってあたり前のことだった。ドゥ・ヴィリユーは言う。

「エルメスにとって、リサイクルは目新しいマーケティングの産物ではありません。それはメゾンの根幹から発するものです。常にクリエイティブであり、われわれが使う貴重な素材に対する敬意と、高度なスキルを持つクラフツマンシップ、それらがわれわれの製品を作り出すのです。これがとても強いメゾンのスピリットなのです」

 エルメスにとっては、ユーモアのセンスも同じく大切だ。プティ アッシュの気まぐれな作品たちを見ると、それがはっきりとわかる(ジッパーで作られたアフガンハウンド、ミンクとクロコダイル革でできたぬいぐるみのブタ、サドルのあぶみにぶら下がるブランコ)。

本記事は2020年7月27日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 35

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