フランク・シナトラは
歴史上最も有害なセレブだったのか？

Frank Sinatra ／ フランク・シナトラアメリカのエンターテイナー、ポピュラー歌手、ジャズ歌手、俳優。1915年、ニュージャージー州出身。1998年没。クルーナー（ささやくように歌う）の名手として知られ、数々のヒット曲を生み出す。また映画『地上より永遠に』（1953年）にてアカデミー助演男優賞受賞。サミー・デイヴィスJr.、ディーン・マーティンらとエンターテインメント・グループ“ラットパック”を結成したことでも知られた。
映画『夜の豹』のパブリシティ用スチール写真のためにポーズをとるシナトラ。ロサンゼルスにて（1957年）。

“セレブ”と“スキャンダル”という言葉は、なぜ相性がいいのだろうか？　ひとつの説は、有名人は人格を映し出す“バリウム”のようなものだから、というものだ。私たち全員が持つ人間としての欠陥を露呈させ、その結果、聖ヨハネの福音書に出てくる姦通の罪を犯した女のような存在となる。そして「自分はあんな人間ではない」と思い込んでいる普通の人たちが、石を投げようと長い行列を作るのだ。

　その最も顕著な例が、フランク・シナトラである。1915年に米国ニュージャージー州ホーボーケンでイタリア系移民の間に生まれた、青い目を持った20世紀の大スターだ。2オクターブの軽やかなバリトンで知られており、彼のレコードは、全世界で1億5000万枚も売れた。彼の人生をよく知っている人たちは、2度のオスカー受賞を含む、映画人としてのジェットコースターのようなキャリアを覚えているだろう。またTHE RAKEの読者なら、長年にわたって変化してきた、彼のスマートなスタイルを指摘するだろう。

　ハイウエストのトラウザーズ、フェドラハットとチェックのブレザーのコンビネーション、ドットとストライプのブレーキング・ルールな組み合わせ、スカーフとタキシードのノンシャランな着こなしなどである。

　しかし、FBIはさまざまな問題を巡って30年以上もの間、シナトラを調査した。死後20年以上経った今でも、人々の意識に残っている彼のイメージは、“欠陥の多い天才”というものだ。ここで、主要な告発をひとつずつ見ていこう。

マイクの前で歌う若き日のシナトラ。