Exclusive Interview
THE CHAMPION AND A CAUSE

大義のために闘う王者
ルイス・ハミルトン

January 2021

text nick scott

2020年7月のオーストリアGPでアレクサンダー・アルボンをリードするハミルトン。

 時計の製造とは異なり、モータースポーツの技術は10年ごとに複雑さを増している。今ではアルゴリズムベースのモデリングによって、レースコンディションやタイヤの摩耗、トラックコンディション、燃料、同じ会場での過去のレース展開といった変数を評価し、オーバーテイクに関するアドバイスをドライバーにリアルタイムで提供する。50年代後半に、ハミルトンがファン・マヌエル・ファンジオとニュルブルクリンクで競ったら、どうなっただろうか。

「ファンジオは素晴らしいドライバー。モンツァ・サーキットで古いシルバーアローを運転させてもらったときに、彼と競ったらどうなっただろうと想像しました。私はヘルメットではなくキャップをかぶり、バンクを走りました。当時のレースの雰囲気を感じたかったからです。サー・スターリング・モスと一緒に併走させてもらい、これがファンジオの見た景色か、としみじみ感じました。とはいえ、ファンジオの時代なら、私はレースに参戦できなかったでしょうね」

 彼はまた輝くような笑みを浮かべた。

差別を受けた経験を生かして 2020年6月、ジョージ・フロイド氏の殺害後に世界中で起きた抗議運動を受けて、ハミルトンはマスコミにこの事件で感じた痛みや苦しみ、失望を語り、自身が子供の頃から受けてきた人種差別について明かした。カート時代は物を投げつけられ、2008年のプレシーズンテストでは黒人の扮装をしたファンに野次を飛ばされたという。「本当の自分でいられるのはヘルメットをかぶっているときだけ」という言葉にはとりわけ胸が痛む。

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

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