September 2020

EÜRO STAR

ダニエル・ブリュール
ドイツ芸術界が誇る若き俳優

photography simon emmett fashion and art direction sarah ann murray
shot on location at kontikistudios.com

 こうして彼はナチ党員を演じたわけだが、若いドイツ人俳優にとって、これはフラストレーションになる場合もあるだろう。国籍につきまとうネガティブな部分であり、型にはまった配役という感は否めまい。しかし、理性的なブリュールはその提案をほぼ即座に受け入れたのだ。

「僕にとっての一番大きなチャレンジは、当時も今も、現実的な意義のある映画を作ることなんだ。5本か、それ以上の作品を孫に見せて、“これは映画史において、今でも一定の重要性と現実的な意義があるんだよ”と言えるようなね。ほとんどの映画は、そうはいかない。けれどこの作品は、参加することに誇りと喜びがあると誰もが自覚していたと思う」

5カ国語を操るがゆえの苦悩 現実的な意義のある映画を作ろうと決意したのがそのときだとすると、以降のブリュールは数々の活躍をしている。5カ国語を流暢に話す彼は、『Lila, Lila(原題)』(ドイツ語)、『EVA〈エヴァ〉』(スペイン語)、『みんなで一緒に暮らしたら』(フランス語)といった国内向け長編映画に出演する数年間を経て、2013年に『ラッシュ/プライドと友情』で国際的な舞台に舞い戻ったのだ。同作は、スポーツ史上最大のライバル関係のひとつに数えられる、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの競り合いを描いたものである。

 ブリュールは、気難しく非常にプロ意識の高いラウダに扮し、クリス・ヘムズワースは、名うてのプレイボーイで、ウイスキーとセックスが“燃料”であったハントを演じた。“SEX, Breakfast of Champions”(セックスはチャンピオンの朝食)と書かれたバッジは誇張ではなかったのだ。ブリュールはこう明かす。

本記事は2017年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 14

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