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“キース・リチャーズ”という神

August 2019

text joobin bekhrad

チャーリー・ワッツ、ミック・ジャガー、ビル・ワイマン、キースとブライアン・ジョーンズが散歩しているところ、1967年。

 ヒット曲が次々に誕生し、キースはダートフォード生まれの優等生から、最高にクールな男へと変貌を遂げた。仲間たちとともにチャートを駆け上がり、夢見た以上のものを手に入れた。

 耳が大きく、オタクのように前髪を切りそろえたちょっぴりファニーなルックスは、女性たちを惹きつけた。髪を長く伸ばし、ベルベットのパンツやヘビ革のブーツといったゴージャスなアイテムにお金をかけ、どこまでも危険なオーラを漂わせたキースはティーンエイジャーの憧れの的になった。ジョニー・サンダースやパティ・スミス、クリッシー・ハインドといった1970年代の若いアーティストたちは、彼を聖人のように崇めた。

ドラッグに溺れる 売れると同時に、ドラッグにもハマっていった。ステージ上では圧巻のパフォーマンスを披露していたが、私生活ではまるでゾンビのようで、数々のトラブルを巻き起こしていた。

 1967年、レッドランズの自宅が家宅捜査されたときは、まだハイな状態だったため、警官が青い小人のように見えたらしい。逮捕された彼は「せこいモラル」のために実刑判決を下した判事をこき下ろした。刑務所からはすぐに出てきたが、その後もトラブルは続く。恋人のアニタ・パレンバーグがミックと浮気したことに傷ついたキースは、つらさを紛らわせるためにヘロインを打ち続けた。

『メイン・ストリートのならず者』のレコーディング中は9日間一睡もせず、しまいには寝落ちしてアンプに頭をぶつけたらしい。ヘロインとコカインをミックスした「チャンピオンの朝食」を自作した朝もあれば、バンド仲間であるロン・ウッドの親戚とのディナー中にコカインがたっぷり入った袋を「デザート」と称して取り出したこともある。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 21
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