August 2019

ELEGANTLY WASTED

“キース・リチャーズ”という神

text joobin bekhrad

『ロックンロール・サーカス』で眼帯姿に扮したキース、1968年。

 少年だった彼を骨の髄まで震わせたのは、はるか遠くの見知らぬ街シカゴからやってきた、ロックンロールの強烈なリズムだった。少年はこれに身も心も奪われ、その人生は一変した。キースが見出した神の名はチャック・ベリーといった。

 キースは小学生だった頃からミック・ジャガーを知っていたが、ふたりが意気投合したのは1961年10月のある日、駅で偶然再会したことがきっかけである。学校をサボって音楽に没頭していたキースと、チャック・ベリーのレコードを持っていたミックは話が合った。

 ふたりはほどなくして金髪のブルースマン、ブライアン・ジョーンズとバンドを組み、チェルシーの質素なアパートで共同生活を始める。「バンド名はどうする?」とプロモーターに聞かれたとき、たまたま手元にあったのがマディ・ウォーターズのベスト盤で、そこに収録されていた『ローリン・ストーン』という曲目を見ながら、ブライアンが「ザ・ローリン・ストーンズにしよう」と言い出した。

 数カ月後にバンド名が「ザ・ローリン“グ”・ストーンズ」になり、チャーリー・ワッツやビル・ワイマンが加入した。キースとミックはキッチンにこもって『アズ・ティアーズ・ゴー・バイ(涙あふれて)』を生み出した。

 お決まりのコードに飽き足らなかったキースは、6弦を外してオープンGチューニングを取り入れ、パターンの組み合わせを追求した。この試みによって独自のサウンドが生まれ、キースは「ヒューマンリフ」と呼ばれるようになる。彼は画期的なリフをいくつも紡ぎ出した(なかには『サティスファクション』のように寝ている間に思いついたものもある)

THE RAKE JAPAN EDITION issue 21
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