ひとつを極める、“アンブロージ”

ベランダに佇むサルヴァトーレ・アンブロージ氏。アンブロージのトラウザーズは、背が高く見えるよう計算されて作られている。曰く「南イタリアの男は、背が低いからね」

「私たちは1年に3,000本のトラウザーズを仕立てており、これ以上は無理です。生産を制限した方が品質管理にはいいのです」

　稀少性によって生じる服の付加価値を考えると、私たちも賛成だ。

　サルヴァトーレ氏に、メンズウェア業界でもっとも尊敬している人物は誰なのかと聞くと、私が質問を終えるか終えないかのうちに「もちろんラルフ・ローレン氏です」との答えが返ってきた。

「ダブル・ブレステッドの服のように、以前流行っていたアイテムが再流行する場合、きっかけは常に彼でした。私にとって、彼はいつも正しいことを正しく行う人なのです。彼の装いも人柄も好きですね」

　敬愛されるミスター・ローレンも、きっと同じ気持ちを返してくれると思う。