ADVANCE AUSTRALIAN FLAIR
俳優:ジョエル・エドガートン
オーストラリアからやってきた才能
June 2019
photography gavin bond
fashion direction jo grzeszczuk
チャコールグレイのウェストコート 参考商品 Ralph Lauren Purple Label
グレイのシャツ Scabal カシミアニットタイ Drake’s
時計「ラジオミール1940 スリーデイズ オートマティック チタニオ45mm」 ¥1,120,000 Panerai リング The Great Frog
ただ、今回の役に関してはその努力はまったく報われなかった。
「どんな権利の侵害も受けないまま42年間生きてきた、ということに気づいたんだ。幸せなことに、オーストラリアで上位中産階級の家庭に生まれ育ち、素晴らしい両親がいて、教育を受けさせてもらい、テーブルの上には食べ物があった。何かができないとか、何かになれないとか、何かをして生きてはいけないとか、誰からも言われたことがなかった」
また、リチャード・ラビングは労働者だったため、エドガートンはスクリーン上で、目の前に立ちはだかる制度に対する弱さを表現する必要があった。それを仲間の前で見せるオープンで深い愛情と並行して表現しなければならず、非常に繊細な演技力が求められる。エドガートンは、この役柄のそういった難しさについてよく理解していた。
「リチャード役に取り組むための知性のレベルについて、僕たちは議論を重ねてきた。僕が思うに、リチャードは本能的な知性が高い。彼は正しい情報に基づいて、正しいことを感じることができる人だと思う。例えば、絶対的で正しいものだと信じ込まされていた法律について、自分自身の状況を考えるとどこかおかしいのではないかと感じていた。間違っていることはわかっていながら、それを言葉にする術を知らなかっただけだ。裁判官や弁護士と同席する権利さえもないと思っていた。リチャードのような労働者は、静かに語るという一面がある。『必要なときだけ話す』ということ。それが、多くの人の心に訴えるんだ」
この作品からは夫妻の憤りの感情が感じられず、当時の状況が正しく伝わらないというクレームもあるという。しかし、内容を考えればこうした意見は的外れで短絡的である。この作品では、自分たちは非力で勝てる見込みがないと感じていた夫婦が直面したある状況を描いている。演技で表現しなければならないのはそこで、現代の人々の期待に沿う必要はない。エドガートンは、こう語っている。
「この作品を観れば、人間の心理というものがよくわかるだろう。みんなが緊迫し、ひどく感情的になってしまったら、観客はそうした感情を抱けなくなる」
彼は自分の仕事に対し、知性と素晴らしい作品を作りたいという思いを持って臨んでいる。世界中が希望を求め、この作品のような物語を通じて前進することを望んでいるのだ。これほど今の時代に合った作品はないし、その責任を果たせる俳優はジョエル・エドガートンをおいて他にいないだろう。
PHOTOGRAPHERS ASSISTANTS: PAUL RAE AND JOHN BAIN GRIFFITH
STYLING AND PRODUCTION ASSISTANT: VERONICA PEREZ
GROOMING: LUCY HALPERIN
SPECIAL THANKS TO THE 1896 STUDIOS AND STAGES
本記事は2017年3月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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