A TOWERING FUGURE
—Hermès エルメス—
類い稀なるエルメスの
ポロサス クロコダイル
June 2021
最高品質のクロコダイル“ポロサス”で仕立てられたエルメスのメンズ鞄は、他に類を見ない。
text yuko fujita
BOLIDE馬車から自動車へと移動手段の大きな変化があった時代背景のなか、1923年、自動車旅行のために作ったバッグが「ボリード」だ。自動車の幌に使われていたファスナーを取り入れた初の鞄でもある。小さなスケールで竹腑と丸腑がこれだけきれいに整ったポロサスが実に美しい。そして、この堂々とした仕立てが生む凜とした佇まいもまた、エルメスの鞄らしい。H48×W47×D24cm。¥6,740,000 Hermès(エルメスジャポン Tel.03-3569-3300)
エルメスの鞄はメゾンの中でも別格の立ち位置にあり、言うなれば“ 世界最高の職人が手がけた鞄”だ。エルメスが世界中のどのブランドよりも職人を大切にし、彼らに対していかに敬意を払っているかは、その製品すべてが雄弁に物語っている。職人を育み続け、歴史の中で培われてきたノウハウや技術を継承していくことは、エルメスというブランドの長い歴史の中で一切ぶれることなく常に最も大切にされてきたことだ。だからこそ、エルメスの鞄は生まれてから長い年月を生きてなお美しく、輝きが褪せないのだ。
エルメスの職人は常に革と対話している。使い込まれたときの鞄の表情までが計算されて仕立てられているが、それはエルメスが培ってきたノウハウと職人の卓越した技術による仕事の結晶だ。革を知り尽くし、革の魅力を最大限に引き出すように仕立てるという、最もシンプルで高度な要求を、常に最高のレベルでクリアしているのだ。
ここに紹介するポロサス クロコダイルの革で仕立てられた鞄は、エルメスのメンズの革鞄の頂点に君臨しているといっていいだろう。ポロサスはスモールスケール クロコダイルとも呼ばれていて、腑がとても小さい。美しく整っていて大変希少であることから、誰もが認める最高級クロコダイルとして、その地位は不動だ。鞄にはその肚部分が使用されているのだが、まずその左右均等に近い腑の並び方に圧倒される。多くの面積を必要とする鞄で使うポロサスは、革の選定、裁断も大変難しい。ゆえに、エルメスにはクロコダイルの鞄を仕立てる専門の職人がいるのは知られた話だ。
ポロサスで仕立てられた鞄はただでさえ希少であるのに、世界中の多くの富裕層を魅了しているため、そのオーラあふれる美しい姿にお目にかかれる機会はそうそうない。今回、ここに紹介しているボリードやケリー・デペッシュの眼福に恵まれた訳だが、カーフの何倍も耐久性に優れ、型崩れもしにくいポロサス製ゆえ、今から何十年という時を経たその佇まいは、さらに魅力を増してオーラを放ち続けているに違いない。
KELLY DEPECHESメンズのブリーフケース「サック・ア・デペッシュ」に「ケリー」の象徴である金具とストラップをあしらった「ケリー・デペッシュ」は、1992年に登場。ここまできれいに整ったスモールスケールのポロサスをあしらうと同モデルの印象も大きく変わる。1点1点表情が異なるポロサスの鞄は、まるでアートピースのようでもあり、ただただ美しい。H29×W36.6×D5cm¥6,920,000 Hermès(エルメスジャポン Tel.03-3569-3300)
本記事は2021年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 39