A SPIRIT THAT LIES DEEP IN MAISON

シャルル・エドシックに秘められた偉大なる冒険の物語

October 2019

 その後は、不屈の精神で会社の再建に力を入れ、ヨーロッパ各国やロシアに赴き、君主たちからの認知を高めていった。1865年には、ザクセン・ワイマール王室の御用達となり、これを機に数々のヨーロッパの王室の食卓を飾ることとなる。以降、シャルルには著名人からの信頼が寄せられ、成功を後押し。大戦後のニューヨークを訪れたチャーチルが手にしていたのも、探検家ロバート・スコットが南極点到達の際に持参していたのも、「シャルル・エドシック」であった。

4年以上熟成される“ノン・ヴィンテージ” シャルルのアメリカ進出は、メゾンの礎そのものだ。その旅路の伴侶は「ブリュット レゼルヴ」だった。創業当時から“飲めばすぐにそれとわかる”と評されたこの特別な1本は、時代とともに少しずつ進化を重ねてきたが、今も変わらず人々を魅了し続ける。歴代の醸造責任者たちも、シャルルの開拓心溢れるスピリットを継承し、常に挑戦することを恐れない。現在、「ブリュット レゼルヴ」の60%にはその年のワインを、残り40%は平均10年もの熟成を経たワインを使用。60ある畑の中から厳選されたシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエを均等にブレンドし、自然が作り出した石灰質のセラー「採石場跡(クレイエール)」で、ノン・ヴィンテージにもかかわらず4年以上もの熟成が行われる。このセラーも、シャルルが誰よりも早く着目し、熟成庫として活用したもの。彼の先見の明なしに、「シャルル・エドシック」は語れないのだ。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 30

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