October 2019

A SPIRIT THAT LIES DEEP IN MAISON

シャルル・エドシックに秘められた
偉大なる冒険の物語


 こうして独立の翌年に渡米を果たしたシャルルは、その才能を遺憾なく発揮する。社交界のパーティがあればどこへでも赴き、政治・経済界で有力な人々と知り合い人脈を広げていったのだ。このカリスマ性に溢れ、シルクハットを被った粋な紳士は、“シャルル”を英語読みにした“チャーリー”という愛称で人々に親しまれ、“シャンパーニュとフランスの大使”として見事なまでに人々の注目を集めた。その勢いはもはや社会現象と化し、彼のシャンパーニュもまたあっという間に世に知れ渡っていった。1860年のニューヨーク滞在中の妻への手紙を引用すれば、彼の「一挙手一投足を記者が追いかけて記事にしている」日々だったのである。

突如一変した風向き 1861年、シャルルは4度目の渡米を果たす。フランス人であることが功を奏し、南部でもビジネスは順調に進んでいた。が、時代がすべてを奪うこととなる。南北戦争が勃発したのだ。現金が底をつき、会社は破産宣言。追い打ちをかけるように、バトラー将軍から領事に宛てた手紙を運んだ罪でシャルルは投獄されてしまう。2年後、リンカーンのとりなしによって晴れて自由の身になった彼は、ようやく帰国の途につく。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 30

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